研究課題
本研究は、血友病A患者に発生するインヒビターの制御を主たる目的とする。血液凝固第VIII因子欠損マウス(血友病Aマウス)に対して第VIII因子を反復投与することにより発生する抗第VIII因子抗体(インヒビター)を保有するマウスを疾患動物モデルとして、第VIII因子遺伝子を導入した自己体細胞由来人工多能性幹細胞(iPS細胞)の胸腺組織への選択的細胞移植療法が第VIII因子特異的な免疫寛容誘導をもたらし、インヒビターの発生の制御に至る可能性とそのメカニズムを明らかにする。前年度において研究基盤となる血友病Aマウスの皮膚線維芽細胞からのiPS細胞の樹立とともに、第VIII因子遺伝子を組み込んだSIVウイルスベクターの作製を終えている。本年度は、1)樹立したiPS細胞を用いて、hanging drop法によるembrynonic bodyの形成後、fibroblast growth factor (FGF)-7, FGF-10およびbone morphogenetic protein 4等による胸腺上皮細胞へのin vitro分化誘導系を確立した。2)SIVベクターを用いて血友病Aマウス由来iPS細胞に対して第VIII因子遺伝子を導入し、胸腺上皮細胞へ分化誘導させた細胞において第VIII因子活性を認めた。3)上述の細胞を高解像度超音波システムガイド下で、血友病Aマウス胸腺組織に選択的に移植する手法を確立し、luciferase搭載SIVベクターを感染させたiPS細胞移植マウス胸腺にluciferase活性が局在することを確認した。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究計画どおりに、樹立したiPS細胞への遺伝子導入、in vitro胸腺上皮細胞分化誘導系の構築、およびマウス個体を用いて胸腺組織への細胞移植手法を確立することができており、次年度に向けた免疫寛容誘導の研究へ展開する準備が完了しているため。
血友病Aマウス由来iPS細胞の胸腺上皮細胞への分化誘導と、SIVベクターによる第VIII因子の遺伝子導入、胸腺組織への選択的細胞移植療法を有機的に組み合わせることにより、新規の抗原特異的免疫寛容誘導療法の開発基盤とする。次年度は、iPS細胞移植血友病Aマウスの免疫応答と免疫寛容誘導成立機序を個体レベルおよび細胞、分子レベルの解析へと展開する予定である。
in vitroの実験が順調に遂行できたことと、次年度に費用のかかるマウスを用いた実験が予定されているため。血友病Aマウスを用いた細胞移植実験を複数の条件下で行う。
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