研究課題
造血幹細胞移植後の非感染性移植後肺合併症におけるレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の関与を明らかにし、予後不良な造血幹細胞移植後合併症における発症のメカニズム、予防法、治療法を解明することを目的とした。二つの独立したコホートから、移植後肺合併症にレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の関与が強く示唆される結果が得られ、これらの結果の意味を特発性肺線維症(IPF)におけるレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の意義と比較し、マウスモデルにおいて確認した。方法;移植後肺合併症と造血細胞移植と無関係の特発性肺線維症(IPF)の両者を比較し、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の肺繊維化に与える影響を確認した。また、マウスにおける肺レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の発現解析を行った。結果;まず、C57BL/6マウスをドナーとしB6マウスをレシピエントとする、造血幹細胞移植後肺合併症マウスモデルを用い、AT1受容体拮抗剤を投与の有無による肺組織の変化を評価し、AT1受容体拮抗剤がマウス肺合併症モデルで肺繊維化を抑制することを明らかにした。しかし、マウスの生存率には差が生じず、AT1受容体拮抗剤はGVHDを抑制せず、肺繊維化のみに影響することと理解された。考察;マウス移植後肺合併症モデルにおいて、レニン・アンジオテンシン系を抑制することにより、肺の繊維化を軽微にすることが可能となった。今後、臨床試験として、ACE阻害剤・AT1受容体拮抗剤の使用が肺合併症を抑制する可能性がマウスモデルでも確認されたことになり、予後不良な造血幹細胞移植合併症の発症予防に向けた臨床試験が可能となる結果を導き出すことに成功した。
すべて 2014
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International Jornal of Hematology
巻: 99 ページ: 175
10.1007/s12185-013-1494-6