研究概要 |
今年度は、われわれが独自に開発した骨髄内直接移植(IBMI)法を用いて、ヒト臍帯血中に世界で初めて同定に成功した非常に未分化な造血幹細胞(HSC)であるCD34抗原陰性(CD34-)SCID-repopulating cell (SRC)(Blood 101:2924,2003)の更なる幹細胞特性の解明を行った。 本研究では、われわれが新たに開発した18種類のLineage (Lin)抗体を用いるnegative selection法(CD34-HSCを1/1,000の頻度まで高度に濃縮純化できる(Blood 114:336,2009; Exp Hematol 39:203,2011)を用いて標的細胞を純化した。本法で純化した18Lin-CD34-細胞におけるMPLの発現とその機能的意義について、18Lin-CD34+CD38-細胞を対照として詳細に検討した。 18Lin-CD34+/-分画におけるMPLの発現率は、各々42%、27%であった。CD34-MPL+細胞は、高い巨核球コロニー、赤血球+巨核球混合コロニー形成能を示した。次に、限界希釈法で18Lin-CD34+/-MPL+/-分画におけるSRCの頻度を測定した。その結果、CD34+MPL+分画(1/48)、CD34+MPL-分画(1/146)、CD34-MPL+分画(1/580)、CD34-MPL-分画(1/1597)であった。これらの4分画細胞をNOGマウスにIBMI法で移植し、6か月毎に1,2,3次移植を行って長期ヒト造血再構築能について検討した。その結果、CD34+/-SRC共にMPLを発現していない分画で3次移植マウスの生着が認められた。 以上より、ヒト未分化HSC(SRC)のhierarchyは、CD34-MPL->CD34+MPL->CD34+MPL+> CD34-MPL+の順であることが示唆された。
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