研究実績の概要 |
最終年度は、研究代表者が世界で初めて同定したヒト臍帯血由来CD34-HSCの更なる幹細胞特性の解明を行った。まず、すでに開発済みの18種類のlineage抗体を用いる新たな純化法(Exp Hematol 39:203,2011)を用いて、既知の膜表面抗原分子を網羅的にFACS解析し、CD133抗原がヒト臍帯血由来CD34-HSCの陽性分子マーカーであることを明らかにした(Leukemia 28:1308,2014)。興味あることに、CD133抗原はCD34+/-HSCの共通の陽性分子マーカーであり、すべてのSRC活性はCD133+細胞分画中に認められた。限界希釈実験(LDA)により、18Lin-CD34+/-CD133+細胞中のCD34+/-HSCの頻度は、各々、1/99, 1/142と計算された。 また、ヒト骨髄細胞由来Lin-CD45- 細胞より、抗CD271及び抗SSEA-4抗体を用いることにより、間葉系幹細胞(MSCs)を予期的に分離することに成功している(特願2013-170480)。中でも、CD271+SSEA-4+細胞に由来するDP MSCsが、高いCD34-SRC支持能を持つことを明らかにしている(Stem Cells 33:1554,2015)。 次に、CD34-HSCsとDP MSCsの共培養系において、CD34+HSCの増幅を試みた。しかしながら、HSCの維持は可能であるものの、増幅には至らなかった。 最後に、CD34+/-HSCの分化特性について、DP MSCsとの共培養系、及びNOGマウスを用いるin vivo異種間移植系で検討した。その結果、CD34-HSCがmyeloid-biased long-term repopulating SRCであることが示された(Blood Cancer J, in press)。以上の研究成果に基づいて、CD34-HSCが、従来最も未分化とされていたCD34+CD38-HSCと比べて、階層制上より上位の未分化HSCであるという新たなモデルを提唱している(Book chapter in Adult Stem Cell Therapies: Alternatives to Plasticity,2014)。
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