研究課題/領域番号 |
24591434
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
小川 啓恭 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (80194447)
|
研究分担者 |
岡田 昌也 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (00309452)
海田 勝仁 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (00441254)
池亀 和博 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (20372609)
井上 貴之 兵庫医科大学, 医学部, 病院助手 (20441256)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 同種骨髄移植 / GVL / GVHD |
研究概要 |
1. HLA半合致ミニ移植の多施設共同研究:厚労省の班研究として実施し、予定の35例を終了したため、現在、その結果を論文化しつつある。1年生存が41%と低いが、HLA半合致移植を、前方向多施設共同研究の形で実施した例はなく、貴重な研究成果と考えている。 2. HLA半合致移植の腸管GVHDの病態生理の解析:HLA半合致移植は、腸管GVHDの制御が、その治療の成否を分ける。通常colon fiberで得た生検材料を用いてGVHDの病理診断が行われるが、この方法では治療による修飾、さらには、組織傷害が進むと原因の特定が困難になるという問題点があった。そこで、この研究では、移植前から、前方視的経時的に、病理検査、FACS解析、各種PCR解析、PET/CT検査を行うことで、HLA半合致移植後の腸管GVHDの病態を明らかにすることを目的にしている。現在までのところ、7例の登録を行った。 3. マウスのMHC半合致移植モデルでのGVL効果発現機序の解析:マウスの移植モデルとして、BDF1 (H-2b/d) → B6C3F1 (H-2b/k)への移植モデルを構築した。GVL効果を解析するためには、recipient (B6C3F1)由来の白血病細胞株が必要であったため、recipientの骨髄幹細胞分画をFACS sortし、キメラ遺伝子(MLL-AF9)を遺伝子導入し、寒天培地上で白血病コロニーを作成することで、いくつかのクローンを得た。これらのクローンを増幅し、致死量に至らない量の全身放射線照射を施したB6C3F1マウスに、経静脈的に投与し、in vivoでの白血病細胞の増殖カーブを解析した。その結果、投与後30-40日で白血病死する白血病細胞株の投与量を特定できた。このモデルを用いて、GVL効果のprofileならびに、その機序の解析を行う予定にしている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. HLA半合致ミニ移植の多施設共同研究:現在、多施設共同で前方視的に行った第I/II相試験の結果を解析し、論文化している最中である。この結果と新しいpilot試験の結果を踏まえて、新しいHLA半合致移植のprotocolを提案したいと考えている。 2. HLA半合致移植の腸管GVHDの病態生理の解析:進捗状況は、ほぼ当初の予定通りである。 3. マウスのMHC半合致移植モデルでのGVL効果発現機序の解析:キメラ遺伝子を、recipientマウスの造血幹細胞に導入することにより、順調に白血病細胞株を得ることに成功した。また、それを増幅し、非致死量の全身放射線照射を施したrecipientマウスに導入することにより、移植後30-40日の間に白血病死に至る条件設定にも成功したので、当初の予定よりも速いペースで進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
1. HLA半合致ミニ移植の多施設共同研究:我々が考案した、HLA半合致ミニ移植の特徴は、ステロイド剤を予防的に用いることで、炎症性サイトカインの産生を抑制し、低サイトカインの環境下、ミスマッチのドナーT細胞の同種免疫反応を起こすことで、GVHDとGVLの解離を引き出し、GVHDを伴わないGVL効果発現を実現することである。このコンセプトに、chemokine receptor blockerを加え、さらに、GVHDとGVLの解離を大きくできるか否かにつき、検討する。 2. HLA半合致移植の腸管GVHDの病態生理の解析:予定された20例を遂行する。加えて、腸管GVHDのbiomarkerとされる、regenerating islet-derived 3-alpha(REG3α)の発現をELISAで測定し、HLA半合致移植後の腸管GVHDのモニタリング、予知判定ができるか否かについて検討する。 3. マウスのMHC半合致移植モデルでのGVL効果発現機序の解析:recipient由来の白血病細胞株と、donorの造血幹細胞およびT 細胞源としてのドナー脾細胞を、同時に、全身放射線照射を施したrecipientに輸注することで、GVHDは生じないが、十分なGVL効果が生じる条件の設定を行う。この条件の下、GVL効果発現およびGVHDの発現mechanismの解析を平行して行うことで、GVHDを伴わないGVL効果発現の分子mechanismを明らかにする。
|
次年度の研究費の使用計画 |
1. HLA半合致ミニ移植の多施設共同研究:chemokine receptor blocker、とりわけ、CCR5 antagonistのGVHD阻止効果を、HLA半合致移植患者に予防的に投与することで、調べる。GVHDの頻度と重症度、GVL効果、再発率につき、従来の移植との比較を、retrospectiveに行う。このdataを基礎にして、新しいHLA半合致ミニ移植のプロトコールの提案を行う。 2. HLA半合致移植の腸管GVHDの病態生理の解析:前方向での腸管GVHDの解析につき、protocolにしたがって遂行する。REG3αの発現とGVHD発症との関係を、pilot的に解析する。 3. マウスのMHC半合致移植モデルでのGVL効果発現機序の解析:GVHDは生じないが、十分なGVL効果が生じ、白血病死亡を免れる条件を見いだす。その上で、recipientマウスの骨髄を、経時的にFACS解析することで、GVLのkineticsを明らかにする。さらに、GVL効果の発現mechanismを、Fas、perforin、granzymeなどの発現、E/T ratioの解析などを行い、細胞遺伝学的、分子遺伝学的に解析を進める。
|