研究課題/領域番号 |
24591434
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
小川 啓恭 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (80194447)
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研究分担者 |
岡田 昌也 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (00309452)
海田 勝仁 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (00441254)
池亀 和博 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (20372609)
井上 貴之 兵庫医科大学, 医学部, 病院助手 (20441256)
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キーワード | 同種骨髄移植 / GVL / GVHD |
研究概要 |
1. HLA半合致ミニ移植の多施設共同研究:厚労省の班研究として実施し、予定の35例を終了した。1年生存率が41%と低いが、HLA半合致移植を、前方向多施設研究の形で実施した例はなく、貴重な研究成果といえる。さらに、末梢血幹細胞の凍結の有無によって、移植後の血球回復に影響を与えるという興味ある結果を得た。 2. 可溶性IL-2R受容体によるHLA半合致移植のGVHDの予測:HLA半合致移植における、血清可溶性IL-2R受容体(sIL-2R)のGVHDのbiomarkerとしての有用性を検討した。当科でHLA半合致ミニ移植を受けた77例を対象に解析した結果、sIL-2Rは、real-timeでGVHDをmonitoringするには適していないが、day 7のsIL-2R値が、GVHDの発症予測因子として、有用であることが判った。 3. マウスのMHC半合致移植モデルでのGVHD制御機序の解析:BDF1(H-2b/d)→B6C3F1 (H-2b/k)へのMHC半合致のマウスの移植モデルで、前処置の全身放射線照射量を5 Gy、13 Gyとする2つのモデルを作成した。いずれも、ドナー由来の造血回復が得られるが、前者(RIST)は免疫学的寛容に入り、後者(MAST)は全例GVHD死亡する。これらの系を用いて解析を行った結果、前者では、host由来の制御性T細胞(Treg)が、移植早期に一時的に増幅し、それがhostの樹状細胞の成熟を抑制することで、ドナーT細胞の活性化と増幅を抑制し、致死的なGVHDの発症を免れることが判明した。一方、host由来の白血病細胞株を投与することでGVL効果を検証する系において、host由来のTregがGVL効果を妨げないことが判った。したがって、host由来のTregをうまく利用することで、GVHDを伴わないGVL効果の発現が可能になると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. HLA半合致ミニ移植の多施設共同研究:多施設共同で前方視的に第I/II相試験を行ったところ、免疫学的寛容に安定して、導入できることが判ったが、進行期の症例に対しては再発が多いということも判明した。当科で開発したHLA半合致ミニ移植のプロトコールにつき、多施設共同前方向試験を行い、その結果を得るという当初の目的は達成できた。 2. HLA半合致移植の腸管GVHDの病態生理の解析:移植早期(day 7)のsIL-2R値が、重症GVHD(主として、腸管GVHD)の発症を予測できるという結果を得た。その他の進捗状況は、ほぼ当初の予定通りである。 3. マウスのMHC半合致移植モデルでのGVL効果発現機序の解析:キメラ遺伝子を、recipientマウスの造血幹細胞に導入することにより、host由来の白血病細胞株を得た。この細胞株を、マウスのMHC半合致移植モデルに適用することで、GVL効果を検出可能なモデルを樹立した。このモデルで、移植後一時的に存在するhost由来のTregが、GVHDを抑制するものの、GVL効果の発現を妨げないということを確認した。ほぼ予定通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
1. HLA半合致ミニ移植の多施設共同研究:我々が考案した、HLA半合致ミニ移植のプロトコールを多施設共同試験の形で検討した結果、免疫学的寛容への導入が安定して得られることが判明した一方、進行期の症例に対しては再発が多いということが判った。今後、進行期例に対しては、前処置の強化が必須と思われ、強化レジメンの有用性を検討する予定である。 2. HLA半合致移植の腸管GVHDの病態生理の解析:HLA半合致ミニ移植において、day 7のsIL-2R値が、GVHD発症の予測因子として有用であることが判った。今後、さらに、cytokine濃度やATG濃度の測定を通じて、HLA半合致移植後のGVHDのモニタリングおよび、より高い精度でのGVHDの発症予測が可能になるかについて、検討を加える。 3. マウスのMHC半合致移植モデルでのGVL効果発現機序の解析:host由来のTregが、移植早期に一時的に存在することによって、GVL効果に影響を及ぼすことなく、GVHDを抑制することが明らかになった。今後、in vivo imaging analyzerを用いて、donor T細胞の動態を明らかにすることによって、より詳細なGVL効果の発現機序の解析を行う。
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