研究課題
本研究の目標は、ペプチドパルスによる非生理的な方法ではなく、内在性に抗原エピトープを発現させ、かつ抗原量を調節できる抗原提示細胞の構築である。懸案のK562細胞のTAP遺伝子ノックアウトは複数のCRISPR-Cas9配列を作成したが作働しなかった。原因は解明できていないが、阻害活性の確認ができたHSVのICP47蛋白の発現ベクターを用いることとした。Kozak配列改変だけでは抗原発現量のコントロールが出来なかったためtetracycline (Tet)-On/Offシステムを導入した。K562にTet制御性トランス活性化因子を導入しクローニングを行った。各クローンにTet応答因子(TRE)の下流にGFPを発現させるベクターを導入、最もtetracyclineでGFP発現コントロールの良いクローンを確定した。このクローンにHLA-A24 cDNAおよびTRE下流にNGFR-CMV pp65エピトープ、NGFR-ACC-1Y マイナー抗原をコードするベクターを導入し評価した。NGFRの発現で間接的に細胞内抗原の発現量を推定した。NGFRの発現が全く確認出来ない状態でもこれらの細胞はCTLで傷害された。細胞表面HLAにエピトープが残っているのが原因と考え、酸性下(pH 2.9)でHLA結合ペプチドを一旦剥がしたが、再度発現したHLA-A24は抗原を提示した。これに対してCD19を認識するキメラ抗原受容体(CAR)導入T細胞はTRE下流にCD19をつないで発現させた細胞を細胞表面CD19強度依存性に傷害しえた。以上の結果より、T細胞エピトープを認識できるCTLはleakして発現している微量な抗原をプロセスしHLAで提示することが示唆された。本来HLAを発現しないK562細胞の特性で、HLA-A24しか発現しない状況下では競合が起きないことが原因と推測された。このため、HLAの発現量をTREベクターを用いて調整するシステムで検証を進めており、これを用いて抗原特異的T細胞の培養条件の設定以降の研究は引き続き継続を行う予定である。
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