研究課題
全身性強皮症の病態形成にinterleukin-6(IL-6)の関与が疑われることから、抗interleukin-6受容体抗体(トシリズマブ[TCZ])の治療的効果を検討する試験を遂行中である。本研究ではこの研究に参加いただいた患者の血清、組織をもっていかなる影響があったかを検証することを目的としている。当施設において予定された既存治療群4例、TCZ投与群4例の全症例の観察を終了した。TCZ投与群4例のうち、2例は本人の希望あるいは有害事象(感染症)の発生により中途で中止となったため、1例は遂行された期間内に限っての検討とし、また残る1例は本研究対象から除外した。当施設倫理委員会で認可されたプロトコールに従って、患者同意のもと確保された血清よりEnzyme Linked Immunosorbent Assay (ELISA)法、およびBio-Plexを用いて各種サイトカインの測定を行った。関節リウマチ患者にTCZが投与された時、血清中IL-6濃度の上昇が観察されることが既に報告されているが[1]、今回のTCZ投与群血清においてもIL-6の上昇が観察された。TCZ投与期間中に皮膚硬度の低下がみられた2例では投与前IL-6濃度は6.4、10.9pg/mLであり、皮膚硬度低下のみられなかった症例の3.6pg/mLより高値であったが、投与後のピーク値は前者で186および29.5pg/mL、後者で56.5pg/mLであり皮膚硬度変化と投与後IL-6上昇との間には観察症例においては関連がなかった。その他、IL-1、MIP-1、IL-8でIL-6の変動に類似する変動が観察されたが、IL-4、IL-5、IL-7には変化が観察されなかった。PDGF-BBは大きな変動を示す症例があるが一定の傾向は観察されなかった。
2: おおむね順調に進展している
中途脱落例があり、本研究計画で立案した通りのサンプル数を確保できなかったが、抗IL-6受容抗体を全身性強皮症患者に投与する試験は計画通り終了した。確保できた血清検体を用いて、27種類のサイトカイン、ケモカインを測定し、経時的変化をみることができた。
今回、血清サンプルを用いた検討を終了したが、当施設倫理委員会で認可されたプロトコールに従って、患者同意のもと生検皮膚組織の確保に努めた。6か月後のre-biopsyが(特に既存治療継続群にて)同意施行できなかった症例が多く、病理組織については当初の計画を変更し、確保された検体にて形態的変化を確認することにする。平成26年度は血清サンプルの検討、病理検体の検討結果を取りまとめ、発表する作業を執り行う。一方、試験計画は少数例の患者での検討であり、また脱落例の発生があったことから、統計学的な検討を加えるには検討サンプル数が乏しい。そこで、新たにTCZ投与を全身性強皮症患者に行う試験を立案中である。
皮膚生検組織を用いて、トシリズマブ投与前後での組織内分子の変動を免疫染色やin situ hybridizationを用いて検討する計画であったが、投与後、とくに既存治療継続群において6ヶ月という短期間での再生検ができなかった症例が多く、十分な検体を確保できなかった。このため生検組織をもちいる研究計画に供する予算が執行されていない。採取させていただいた皮膚組織検体は極めて貴重なものであり、規模は縮小されるが計画どおり26年度において細胞外マトリックスに対する免疫染色を執り行う。また、血清検体について、Bioplexを用いたサイトカイン分子の測定が首尾よく行いえたので、可溶性IL-6受容体など他の関連分子について、同じ方法を用いて追加検討を行う。これらの検討結果は海外での学会発表を行う。また、論文発表を行うが、これにかかる掲載料、オープンアクセス版権料を本研究費から拠出する。
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