研究概要 |
IgG4関連疾患では、Th2およびTreg系サイトカイン(IL-4, IL-5, IL-10, IL-13, TGF-betaなど)が病変部で上昇していることが知られており、T細胞がこれらサイトカインを産生していると考えられていた。しかしながら、T細胞がこれらのサイトカインを産生しているとすると矛盾する現象がいくつもある。加えてこれまで実際にそれらのサイトカインがT細胞によって産生されているというevidenceはえられていない。そこでわれわれはサイトカイン産生細胞を突き止めるべく研究を開始した。対象は顎下腺IgG4関連疾患、唾石症および口腔癌などで摘出された正常顎下腺をもちいた。まずパラフィン材料からRNAを抽出し、各種サイトカインの定量を行った。その結果、顎下腺IgG4関連疾患はコントロール群に比して有意にサイトカインの上昇が認められた。さらに免疫染色において各種サイトカイン陽性細胞が見いだされ、顎下腺IgG4関連疾患で有意に増加していた。さらにこれらサイトカイン陽性細胞はc-kitに陽性を示し、マスト細胞であることが確認された。 われわれの研究においてこれらのサイトカインがマスト細胞によって産生されていることが明らかとなった。IgG4関連疾患では、患者の多くにアレルギーの合併や既往が多く、病態形成に何らかのアレルギー的要因が示唆されていたが、今回の研究結果において、それを支持する結果となった。 本研究成果は病態形成メカニズム解明への大きな糸口になったと考えている。 なお、本研究成果は、病理学系トップジャーナルの一つである米国カナダ公式病理学会誌 Modern Pathology に掲載された。
|