研究実績の概要 |
IgG4関連疾患の病変部でIL-4, IL-10, TGFβ1などのTh2/Tregサイトカインが亢進しているという報告は病態形成機序を解明する上で非常に重要であり1,2、これらのサイトカインの影響でリンパ球・形質細胞浸潤、IgG4の産生、線維化、好酸球浸潤、高IgE血症などの特徴的な所見を形成されると現在推測されている。T細胞が直接これらのサイトカインを産生すると考えるのが自然であるが、我々の免疫染色による検討ではT細胞以外の細胞にサイトカイン強陽性像が認められた。これらの細胞が何であるかについて検討を行った。 材料と方法: 9例のIgG4関連唾液腺炎、コントロールとして5例の顎下腺唾石症、6例の正常顎下腺のホルマリン固定パラフィンブロックを用いてreal-time PCR。免疫染色、蛍光二重染色を行い検討した。 結果: IgG4関連疾患では他のコントロール2群と比較して有意にIL-4, IL-10, TGFβ1の発現が亢進しており、従来の報告と合致する結果であった。一方で、IL-5については少なくとも今回の検討では明らかな差は見られなかった。これらのサイトカインの免疫染色を行うとIgG4関連疾患においてIL-4, IL-10, TGFβ1はいずれも陽性細胞が有意にコントロール群よりも増加しておりreal-time PCRの結果と相関していた。これらの陽性細胞の形態は多辺形で比較的豊かな胞体を有し、リンパ球よりもマスト細胞に類似した形態を示した。マスト細胞の代表的なマーカーであるc-kit陽性細胞はIgG4関連疾患において正常よりも有意に増加が認められたが、唾石群の方がより多い傾向が見られた。蛍光二重染色を行うとIgG4関連疾患においてIL-4, IL-10, TGFβ1それぞれのサイトカインとc-kitの二重陽性像が認められ、少なくとも免疫染色で確認されるレベルにおいてはマスト細胞がこれらのサイトカインの産生細胞である可能性が示唆された。
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