研究実績の概要 |
滑膜細胞の脂肪分化誘導による関節リウマチ治療の可能性を追求するため、脂肪分化を誘導した滑膜細胞の活性化に関して解析した。 滑膜細胞の活性化に関しては、脂肪分化誘導有無で比較した遺伝子発現検索により、脂肪分化によってIL-6、MMP-1, -2、接着因子ICAM-1の発現低下を見出した。IL-6, MMP-1, -2に関しては蛋白レベルでの低下も確認できたが、ICAM-1に関しては、リンパ球を用いた接着アッセイにおいて有意差は得られなかった。また、脂肪分化誘導の方法が異なると、その遺伝子発現パターンも少しずつ異なり、脂肪分化といっても一概にその機能変換パターンを予測できるものではないことも判明した。 滑膜細胞の脂肪分化誘導による上皮間葉移行に関しては、間葉系マーカーとされているsmooth muscle actinの発現低下は明らかであったが、cadherinに関しては元々の発現が低いこともあり、その発現に関しては明らかな変化は指摘し得なかった。 脂肪分化誘導の方法の検討では、天然に存在する脂肪分化誘導能力を有しているコンパウンドとしてArtepillin-CとMagnololによる脂肪分化誘導とその効果を検証した。これらのコンパウンドはこれまでの方法と同様に滑膜細胞の脂肪分化誘導をもたらすが、Magnololは脂肪分化誘導濃度と細胞障害濃度が狭いため、我々の目的にはArtepillin-Cが適していると判断。Artepillin-Cによる滑膜細胞の脂肪分化誘導によって、MMP-1, MMP-2の分泌低下が確認された。Artepillin-Cの滑膜細胞機能転換のポテンシャルに関しては関節リウマチ治療薬として有効であることが予想されるため、特許申請を行った。
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