研究概要 |
本年度の研究は、ヒトBregの示標となるIL-10産生評価を中心に行った。 まずは、受容体発現などを考慮した上で、ヒト末梢血B(CD19+)細胞を抗IgM抗体、抗CD40抗体、CpG(TLR9リガンド)、BAFF、April、IFN, TNFα, IL-2, -4, -6, -10, -21, -27で刺激を行った。その結果、IL-10 mRNAならびに蛋白発現ともにCpG刺激が最も強力に誘導したことから、ヒトBreg誘導にはTLR9刺激が重要と示唆された。また、抗IgM抗体によるB細胞抗原受容体(BCR)の刺激は、単独でのBreg誘導は弱かったが、CpGによるBreg誘導に対しては相乗的に作用し、その理由としてBCRシグナルによるTLR9発現上昇が示唆された。次に、CD19+細胞よりセルソーターを使用し高純度naïve, memory B細胞に分離しCpG刺激によるBreg誘導能を比較したところ、memory B細胞に高い傾向が見られた。さらに、memory B細胞分画をIgM-memory, switched memory B細胞に分離し比較したところ、前者のサブセットにて最も強いBreg誘導能を認めた。現在、このサブセット内でさらにBreg誘導能の高い亜集団に分離可能なマーカーの同定を試みている。 上記の研究に加え、Breg誘導に重要なTLR9下流のシグナル経路の同定を目的に、MAPキナーゼ、PI3キナーゼ、NFκB阻害薬による検討を行った結果、全ての阻害薬は濃度依存的にBreg誘導を抑制した。この結果は、TLR9下流の複数のシグナル経路が共同しBregを誘導していることが示唆され、これらのシグナル経路が共通の転写因子の活性化に終局するのか現在検討を試みている。
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