研究課題
本年度の研究は、以下の2点を中心に行った。(1) ヒトBregの同定昨年度の研究において、ヒト末梢血IgM-memory B細胞サブセットにTLR9刺激下でIL-10を高発現するBregが誘導できることが判明した。本年度は、TLR9刺激下の細胞表面マーカーの変化とBreg誘導能について詳細に解析した。その結果、TLR9刺激によりCD20やHLA-DRの発現低下、CD27やCD38の発現増加といった形質細胞分化へむかう表面マーカーの変化が見られ、この中間段階にて高いBreg能を獲得することが判明した。現在、形質細胞分化に関連した遺伝子発現とBreg誘導について分子レベルでの解明を試みている。(2) BregによるT細胞機能の制御自己免疫疾患の病態におけるT-B相互作用の重要性に着目し、本年度はBregがエフェクターT細胞の機能に及ぼす影響について検討した。そこで、TLR9刺激で誘導したBregとCD3/CD28刺激によるエフェクターT細胞(制御性T細胞は除いた条件下)との共培養を行った。T細胞増殖をCFSEアッセイにて評価を行った結果、BregはT細胞増殖を著明に抑制した。また、T細胞のIFNγ産生について細胞内染色にて評価を行った結果、BregはT細胞のIFNγ産生を著明に抑制した。さらに、上記のBregを介したT細胞機能抑制の大部分が抗IL-10中和抗体の存在下にて解除されたことから、Breg産生のIL-10が主なT細胞機能制御メカニズムと示唆された。興味深いことに、無刺激B細胞とエフェクターT細胞との共培養でも弱い抑制が見られることより、T細胞の表面分子を介した相互作用による弱いBreg誘導も示唆された。
2: おおむね順調に進展している
ヒトBreg誘導のメカニズム解明に繋がる結果が得られると同時に、共培養の系を用いてBreg機能の確認ができた。以上より、本研究の達成度としてはおおむね順調に進展しているといえる。
Breg誘導において最も重要な転写因子などを含む標的分子の同定を進めると同時に、自己免疫疾患におけるBregの質的あるいは量的変化についても検討する予定である。
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http://www.1nai.med.kyushu-u.ac.jp/