研究課題/領域番号 |
24591454
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
小端 哲二 獨協医科大学, 医学部, 教授 (10205445)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | HIF-1α / B細胞分化 / 制御性T細胞 / 解糖系 / 自己免疫 |
研究概要 |
(1) 骨髄でのB細胞の発生・分化過程では、転写因子HIF-1αが液性因子によりその機能の発現が制御されていると予想しマウスの実験を行った。結果、最も未熟なpro-B細胞では、HIF-1αにより制御される分子(VEGF)の発現がIL-7により誘導され、これはHIF-1α阻害剤により抑制された。現在、HIF-1α欠損骨髄細胞を用いて確認実験を行っている。 (2) HIF-1α欠損キメラマウスでは末梢にmarginal zone(MZ)型B細胞が多く出現する。これは野生型マウス同様に脾臓でのみ観察され、HIF-1αが脾臓でのB細胞の分化に関与していることを明らかにした。現在、自己抗体産生との関連を検討中である。さらに、自己抗体産生におけるHIF-1αの役割を明らかにすべく、抗体産生とクラススイッチにおけるHIF-1αの役割を探る予備実験系を立ち上げた。 (3) 制御性T細胞(Treg)の機能発現における解糖系等の細胞代謝の役割を検討するために、マウスTregを調整し実験を行った。その過程で新たに樹立した末梢リンパ組織由来ストローマ細胞がCD2分子依存的にTregの生存を支持することを見いだした。これにはアポトーシス促進因子Bimの発現減少を伴うことを明らかにした。また、Tregは解糖系への依存度が他のT細胞と比べて低いものの、オートファジー関連遺伝子の発現が高いことを示唆する結果を得た。さらにTregは免疫応答時の挙動が他のT細胞と著しく異なることを明らかにした。現在、これが細胞代謝の違いによるものか検討を進めている。 連携研究者:橋口昌章(研究者番号20372443、獨協医科大学医学部准教授、博士(農学)、B細胞におけるHIF-1αと解糖系の解析)、柏倉裕志(研究者番号40382890、獨協医科大学医学部助教、博士(医学)、制御性T細胞におけるHIF-1αと解糖系の解析)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画では、1)正常な骨髄でのB細胞分化過程におけるHIF-1αの機能発現機序、2)自己抗体産生B細胞分化におけるHIF-1αと解糖系の役割、3)Tregの機能発現におけるHIF-1αとエネルギー代謝、特に解糖系の役割、の3点を明らかにすることを目標とした。 初年度終了の現在、1)に関してはIL-7など液性因子による機序をほぼ明らかにし、現在確認実験を行っている。従って、これに関しては終了年度を待たずに研究成果を発表出来るものと考える。2)については、HIF-1αの自己抗体を含む抗体産生の機序を探るべく、現在2種類のHIF-1α欠損マウスを用意している最中である。これらのマウスを用いるための予備実験は既に終了しており、実験系は確立できた。マウスが樹立でき次第、実験に取りかかり、一定の結果を得られるものと考える。3)では末梢でのTregの生存機構を明らかにし、既に論文発表した。また、Tregが他のT細胞と比べて代謝だけではなく、挙動が異なることを明らかにした。細胞の代謝と挙動が関連しているのかを検討するのは非常に興味深く、次年度以降の新たな検討課題を発掘できた。 連携研究者:橋口昌章(研究者番号20372443、獨協医科大学医学部准教授、博士(農学)、B細胞におけるHIF-1αと解糖系の解析)、柏倉裕志(研究者番号40382890、獨協医科大学医学部助教、博士(医学)、制御性T細胞におけるHIF-1αと解糖系の解析)
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今後の研究の推進方策 |
(1) IL-7等サイトカインによる骨髄B細胞でのHIF-1α機能発現制御をHIF-1α欠損骨髄細胞を用いて確認し、これまでに得られた知見をまとめて発表する。 (2) 脾臓でHIF-1α欠損B細胞がmarginal zone(MZ)型の表現型を示すものが多いことが示された。そこで、実際のHIF-1α欠損マウスの脾臓でのMZの構造等を組織学的に検討する。また、MZ型B細胞が自己抗体を産生しうるかを検討する。さらに、HIF-1α/RAG-2キメラとともに、B細胞特異的にHIF-1αを欠損したマウスを用いて、自己抗体産生におけるHIF-1αの役割を解析する足がかりとして、HIF-1αの抗体産生とクラススイッチにおける役割を検討する。また、免疫応答時における免疫組織での酸素濃度、グルコースの取り込み,そしてHIF-1αの発現を観察する系を確立する。 (3) Tregの免疫応答時の挙動と細胞代謝の関連を検討する。免疫応答時におけるTregを経時的に分取し、HIF-1α、解糖系、呼吸鎖、オートファジーに関係した分子、そして細胞代謝に関連していると考えられているSirtuin分子の発現を検討する。また、Tregの免疫応答時の特殊な挙動が自己免疫の制御と関連しているかを検討する。さらに、HIF-1α欠損Tregと野生型Tregとの免疫応答時の挙動・代謝を比較しTregにおけるHIF-1αの役割を検討する。 連携研究者:橋口昌章(研究者番号20372443、獨協医科大学医学部准教授、博士(農学)、B細胞におけるHIF-1αと解糖系の解析)、柏倉裕志(研究者番号40382890、獨協医科大学医学部助教、博士(医学)、制御性T細胞におけるHIF-1αと解糖系の解析)
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度8月に開催が予定されている国際免疫学会での発表、情報収集のために研究費の一部(30万円)を本学会への出張費として使用する。また、常に最新の情報を入手するための専門誌購読費(5万円)として使用する。残りは全て消耗品費として使用する。主に、抗体・阻害剤・サイトカイン・PCR関連の消耗品として用いる予定である。 連携研究者:橋口昌章(研究者番号20372443、獨協医科大学医学部准教授、博士(農学)、B細胞におけるHIF-1αと解糖系の解析)、柏倉裕志(研究者番号40382890、獨協医科大学医学部助教、博士(医学)、制御性T細胞におけるHIF-1αと解糖系の解析)
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