研究課題/領域番号 |
24591460
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
有馬 雅史 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00202763)
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研究分担者 |
徳久 剛史 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20134364)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | PHF11 / IgE / アレルギー |
研究概要 |
アレルギー性疾患に関連した遺伝子として新たに同定されたPHF11のIgE抗体産生に対する役割を解明するために、PHF11トランスジェニックマウスを用いて解析を行った。(1)In vitroで、抗IgM抗体、抗CD40抗体およびIL-4の存在下で活性化した脾臓由来の成熟B細胞において、PHF11の過剰発現により、他のグロブリンサブクラスと比べてIgE陽性細胞が増加した。また、培養上清中のIgE抗体産生量も増加した。(2)活性化B細胞においてIgEクラススイッチに必須であるgermline C epsilon の発現がPHF11の過剰発現により増強した。現在、germline C epsilon の発現を制御する主要な転写因子としてNF-kB がすでに知られており、ヒトPHF11はNF-kB と結合することが報告されていることから、germline C epsilon プロモーターのNF-kB結合領域におけるPHF11の役割を明らかにするために、以下の解析を行った。Mycタグを付けたPHF11遺伝子の発現ベクターをGFP遺伝子と共に活性化B細胞に導入し、PHF11-Myc融合蛋白を発現させ、抗Myc抗体を用いたChIP解析を行った。その結果、C epsilon プロモーター領域のNF-kB 結合領域においてPHF11の結合が示唆されたことから、PHF11がNF-kB と強調してプロモーター活性を調節する可能性が考えられた。以上の結果は、PHF11がIgE抗体産生において重要な役割を果たしていることを示しており、引き続きPHF11の役割を明らかにすることによって、アレルギー性疾患の新規診断法や根治療法の開発へと道が拓かれと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究計画はPHF11の生物学的機能とその分子制御機構についての解析を計画した。PHF11分子のB細胞によるIgE抗体産生に対する作用についてin vitro および in vivo による様々な生物学的解析法により詳細に検討した。また、IgEクラススイッチの開始に必須であるgerminal C epsilonの発現誘導に対してPHF11がクロマチンモデリングの制御を介して関与することを強く示唆する結果が得られた。これらの解析結果は免疫およびアレルギーの病態における本質である抗体産生に対してPHF11が極めて重要な役割を果たすことを示している。その分子制御機構がクロマチンレベルで行われている可能性が示された。これらの成果は次年度の研究へ繋がると思われ、当該年度の目的はほぼ達成された。
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今後の研究の推進方策 |
今後はH24年度の研究に引き継き、まず(1)IgEクラススイッチにおけるgerminal c epsilon プロモータ活性の発現に対するPHF11の機能と他の転写因子であるSTAT6およびBCL6との機能的関連について詳細に解析し、さらに(2)PHF11遺伝子の発現調節機構、(3)活性化B細胞の維持とアレルギー性喘息の病態におけるPHF11の役割、(4)PHF11の血清IgE抗体レベルの維持やアレルギー性疾患の慢性化病態における役割、(5)PHF11のT細胞や自然免疫系細胞における機能について研究を行う方針である。
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次年度の研究費の使用計画 |
IgEクラススイッチにおけるPHF11とSTAT6およびBCL6との機能的関連に関する研究はH24年度から次年度に延期となったため、H24年度に同研究に割り当て予定とした研究費(177,015円)をH25年度に請求した研究費と合わせて以下の研究に使用する。lck-PHF11-TgマウスをSTAT6-Koマウスまたはlck-BCL6-Tgマウスとそれぞれ交配してPHF11-TgxSTAT-koマウスおよびPHF11-TgxBCL6-Tgマウスを作製する。そして、これらのマウスおよび野生型マウスの脾臓由来の成熟B細胞をin vitroで活性化し、IgE陽性B細胞をFACSで解析する。さらに、PHF11-Myc融合蛋白およびGFP蛋白をSTAT6-KoおよびBCL6-Tgマウスの活性化B細胞で発現させ、GFP陽性細胞のgermline C epsilonプロモーターにおけるPHF11、STAT6およびBCL6の結合をChIP法により比較検討する。
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