研究課題/領域番号 |
24591464
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
長谷川 均 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40164826)
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キーワード | 寛容型樹状細胞 / 制御性T細胞 |
研究概要 |
近年免疫寛容樹状細胞(tDCs)が注目されており、自己免疫,移植免疫において免疫寛容を導き、細胞治療への応用が期待されている。生理活性脂質、核内受容体リガンド、キナーゼ阻害剤ライブラリーからのスクリーニングから、tDCsを誘導する物質として、Cキナーゼ阻害剤(PKCI)を得た。PKCIにて誘導した樹状細胞(PKCI-DCs)の特徴を報告する。【材料と方法】ヒト末梢血CD14陽性細胞から、GM-CSF,IL-4を加え、5日間培養にて未熟DCsを作成し、さらに2日間、TNF-alpha,IL-1beta,PGE2の成熟誘導カクテルを加えて成熟DCsを誘導した。その成熟過程においてPKCIを加え、tDCsを誘導した。さらに、今まで報告されているtDCsを誘導する物質,IL-10, TGF-beta、VitD3、Dex, rapamycin, PPARgamma+retinoic acidと PKCI-DCsとの比較を行った。また、マウスPKCI-DCsを作成し、GVHDモデルマウスを用いて、PKCI-DCsのin vivoでの効果を検討した。 【結果】ヒトPKCI-DCsの表面マーカーはCD40,CD80,CD83,CD86,MHC class Iの発現は低下していた。また、CCR7の発現も比較的高く維持されており、IL-10とTGF-betaのサイトカイン産生が著しく増加していた。さらに、PKCI-DCsと共培養したT細胞は増殖能が低下しており、またIL-10,Foxp3の発現細胞が有意に増加していた。また、炎症環境下において、PKCI-DCsは安定であった。機序に関しては、PKCI存在下ではNF-kappaBの発現の低下と細胞内cAMPの上昇が認められ、tDCsが誘導されることが明らかになった。PKCIと他の誘導物質によって作成したtDCsを比較したところ、T細胞の抑制能、抑制性のサイトカインの産生、遊走能を満たす物質として、単独ではPKCIが有力であった。GVHDマウスモデルマウスにPKCI-DCsを投与したところ、GVHDは有意に抑制でき、生存期間の延長が確認できた。ex vivoだけでなくin vivoにおいても免疫寛容作用を保つことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)Cキナーゼ阻害剤(PKCI)を用いた安定性のあるヒト免疫寛容樹状細胞(tDCs)の作製に成功した。2)PKCIによるtDCsの誘導機序に関しても解析できた。3)マウスPKCI-DCsを作成でき、ヒトPKCI-DCsとほぼ同様な性質を持つことが示された。4)PKCI-DCsをGVHDマウスモデルマウスに投与したところ、GVHDは有意に抑制でき、in vivoにおいてもPKCI-DCsは免疫寛容に働くことが示された。5)PKCIと他の誘導物質によって作成したtDCsを比較したところ、T細胞の抑制能、抑制性のサイトカインの産生、遊走能を満たす物質として、単独ではPKCIが有力であることが判明した。
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今後の研究の推進方策 |
1)PR3-ANCA関連血管炎患者から誘導したPKCI-DCsを用いて、PR3-ANCAに対する抗原特異的制御性T細胞の作成をin vitroで行っており、その性質の解析を行う。2)免疫抑制系DCへ分化誘導を促進させる物質を数多く単離している。それらのうち、2,3の物質を解析する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
現在、PR3-ANCA関連血管炎患者から、PR3-ANCAに対する抗原特異的制御性T細胞の作成を行っているが、まだ完全に作成できていない。このため、一部の研究費を次年度に繰り越す。次年度も研究計画書の通りに、研究費を使用し、研究を遂行していく予定である。 試薬類や培養液に充当予定。
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