1. ヒトの未熟樹状細胞の成熟過程において、プロテインキナーゼC阻害剤(PKCI: bisindolylmaleimide I)を加えることで、安定性のある免疫寛容樹状細胞(PKCI-tDCs)が誘導している。今年度はPKCI-tDCsと既報告の誘導物質、すなわち、IL-10 、TGF-beta、vitamin D3 (Vit D3)、dexamethazone (Dexa)、rapamycin (Rapa)、PPARgamma+retinoic acid (PPAR+RA)の6種類でそれぞれ誘導されたtDCsとの比較検討を行い、どの物質で誘導されたtDCsが臨床応用に適切かをex vivoにて検討した。検討項目は、表面マーカー、貪食能、CCL19に対する遊走能、IL-10およびTGF-betaの抑制型サイトカインの産生能、T細胞増殖抑制能、Foxp3陽性T細胞(Treg)およびIL-10産生細胞(Tr1)の誘導能である。貪食能はすべてのtDCsに同等に認められた。T細胞増殖抑制能が高いのは、PKCI、IL-10、Vit D3、PPAR+RAの4種類から誘導されたtDCsであった。これらのうち、Tr1誘導能が高いのはIL-10とPKCI、Treg誘導能が高いのは、PKCIとPPAR+RAであった。これらのうち、CCL19に対する遊走能が維持されていたのはPKCIのみであった。以上より、PKCI-tDCsは、臨床応用3原則、即ち、(1)ナイーブT細胞をTreg細胞に誘導するために反応の場である二次リンパ組織へのCCL19に対する遊走能が維持されていること、(2)炎症状況下でも安定していること、(3)Tr1細胞やTreg細胞などの機能的な制御性T細胞が十分誘導できることが維持されており、単独ではPKCIが有力であった。 2. ANCA関連血管炎患者末梢血から誘導したPKCI-tDCsを用いて、PR3-ANCAもしくはMPO-ANCAに対する抗原特異的Treg細胞の作成をex vivoで行ったが、現時点では十分できていない。これは、患者末梢血サンプルの多くはステロイドや免疫抑制剤を用いており、リンパ球の数や増殖が悪いためと考えられた。
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