研究課題
免疫応答の最前線に位置し,自己と非自己の抗原認識に深く関わっている樹状細胞は各種感染や炎症の特性に応じて異なる免疫応答を誘導し得ることが知られている。この性質を樹状細胞の機能的可塑性と呼び,樹状細胞を活性化させる因子の質的・量的差異およびそれらの組み合わせによって生み出されると考えられている。申請者はこれまでにアレルギー発症に深く関わっているサイトカインTSLPがヒト樹状細胞を活性化させる機構を明らかにしてきた。TSLPは主として上皮細胞から産生・分泌される分子であり,受容体欠損マウスでは実験的アレルギー症状の軽減が見られるなど,アレルギー治療の新規標的分子として注目されている。TSLPシグナル伝達機構を解析するためにまずTSLP受容体を過剰発現させヒト樹状細胞で認められるようなTSLP応答性を獲得した細胞株を樹立した。TSLPの強力な樹状細胞活性化機構が受容体鎖細胞内領域に見られるITAM様モチーフを介しているのではないかと考えたが,Syk等のキナーゼ活性化は検出できず否定的だった。Toll様受容体を介した活性化刺激により樹状細胞はI型インターフェロン(IFN)の産生を介して転写因子IRF8やSTAT4の発現を増強するが,これらはTh1分化に重要なIL-12産生に関わる分子群であり,一旦この状態になると樹状細胞のTh2分化能は不可逆的に阻害されると考えられた。すなわちI型IFN活性の有無が樹状細胞の機能的可塑性を制御している主要な分子である可能性が予想された。
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