研究課題/領域番号 |
24591469
|
研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
竹内 恵美子 北里大学, 医学部, 講師 (00406935)
|
研究分担者 |
岩渕 和也 北里大学, 医学部, 教授 (20184898)
|
キーワード | 骨髄移植 / SLE / 好中球 |
研究概要 |
本研究は、human SLEのモデルであるBXSB/Yaaマウスをhostに用いて、正常なマウスの骨髄を移植すると正常骨髄から分化したCD4 T細胞がhost由来の自己反応性B細胞をtrimmingするため自己免疫疾患の発症が抑制されることを明らかにすることを目的としている。RAG2 knock out(KO)mouseとTCRαKO mouseの骨髄を用いた移植実験により、正常骨髄からT細胞が分化できないようにすると自己抗体の産生が抑制されず、病理組織学的検討によってもSLE所見が認められた。樹状細胞やマクロファージなどの抗原提示細胞を正常細胞由来の細胞で置き換えてもLE様症状が進展するということは、骨髄移植により胸腺でのnegative selectionが仕切り直されたために自己免疫状態がreverseされたわけではないことがわかった。さらに、自己反応性B細胞を制御するには正常骨髄由来のT細胞が必須であることがわかった。 また、BXSBをhostにすると、遺伝子異常を持たない正常マウス由来のB細胞でも自己抗体を産生するようになるため、B細胞活性化サイトカインBAFFに注目し、血清のBAFFを正常マウスと比較したところ、BXSB/Yaaでは生後12週ごろから抗DNA抗体の上昇を伴ってBAFFが上昇した。BAFFのsourceになっている細胞を特定するため、FACSや磁気ビーズを用いて細胞の分離を行い、real time PCR法などを用いて微量なBAFF mRNAの発現上昇を比較したが、その結果、従来考えられているマクロファージ等はBAFF異常高値の原因細胞とは考えにくく、炎症性サイトカインにさらされた好中球がsourceとなっている可能性が浮上した。この点について、好中球からのサイトカイン分泌の制御を含めた解析を引き続き行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
B cell knock-out搬入のための審査の結果の通達が遅れ、knock-out mouseを使った比較治療実験が全体的に遅れている。 また、今まで濾胞樹状細胞から分泌されるサイトカインBAFFがリンパ節内でB細胞の過剰な活性化を促すと考えてきたが、並行して行ってきた複数の実験結果から、血清のBAFFの上昇は濾胞樹状細胞から分泌されるBAFFの量で説明できないと結論するにいたった。そのため、これまでの仮説を一部修正し実験系を組みなおさなければならなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
我々は今までBAFFのsourceになっている細胞は、骨髄移植により入れ替えることのできない細胞、即ち濾胞樹状細胞を有力視してきたが、昨年度までの研究結果をふまえると、少なくとも血清のBAFF上昇に関しては好中球が関与している可能性が高いと考えられる。他の研究グループの報告などから、SLEにおいては、好中球そのものの異常はもとより血清に好中球のBAFF分泌やNETosisを誘導するFactorがあることが示唆されている。 我々はこれらの報告をふまえ、BXSBモデルマウスにおける好中球関連の異常を明らかにし、骨髄移植により好中球の異常を制御する方法に関してさらに研究を進めるつもりである。
|
次年度の研究費の使用計画 |
前年度に申請書の審査の手違いで搬入が遅れていた遺伝子組み換え動物を、予定通り今年度搬入できたため、概ね前年度分と合わせて概ね予定通りの使用額である。 予定通り研究を遂行できれば次年度も使用額の大幅な過不足は生じないと考えられる。
|