本研究テーマを完遂するために、1)凝固系物質による樹状細胞(Denderitic Cell:DC)の活性化と炎症応答増強の実験システムの確立、2)そのシステムを利用して、線溶系物質による炎症反応制御能の検討という二段階を必要とする。凝固系物質である血小板を用いたDCの活性化機構を明らかにした。アレルギー発症機序においてDCはTh2関連アレルギー性炎症を惹起し、アレルギー性炎症カスケードを引き起こす。上皮由来のサイトカインである胸線間質リンパ球増殖因子(thymic stromal lymphopoietin:TSLP)が、DCからケモカインリガンドCCL17を産生させ ることにより、メモリーTh2細胞の局所浸潤とアレルギー性炎症の維持に重要な役割を果たすことが報告されている。一方、凝固系物質である血小板はサイトカインやTNFスーパーファミリーなど免疫メディエーターを発現し、炎症誘導においても重要な役割をしている。しかしながら、血小板とDCのクロストークによるアレルギー免疫応答調節機序の報告は殆ど無い。今回我々は新たにトロンビン受容体により活性化した血小板がCD40リガンドに加えて、TNFスーパーファミリーの一つであるRANKリガンドを発現することにより、DCのCD86を増強し、さらにTSLPと同時に活性化血小板を添加することによって、DCから産生されるCCL17を増加させ ることも明らかにした。この結果から、凝固因子である血液に多量に存在する血小板はDCによるアレルギー性の炎症を増幅させる可能性が示唆された 。すなわち抗血小板治療が、アレルギーにおける新たな治療戦略となる可能性が示唆された。この内容は論文として”Platelets”に掲載された。
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