研究概要 |
好中球などの炎症細胞は炎症性疾患で活性化し、微生物を排除する一方で宿主の組織を破壊し症状悪化にも働く。我々は炎症細胞の機能を評価するために細胞動態解析装置を開発しその機能を評価する系を構築してきた(J Immunol Methods, 320, 155-163, 2007)。その中で、好中球は細菌由来のホルミルペプチドfMLPへの遊走と、内在性の脂質メディエータ(血小板活性化因子PAF)への遊走ではパターンが異なることを見いだし、炎症惹起のメカニズム解明の糸口を見いだしてきた。本研究では、fMLPおよびPAFへの遊走パターンの違いを検証し、それらの受容体および受容体以降の異なる情報伝達因子の同定を目指している。 1年目から2年目にかけて(平成24、25年度)に、fMLPとPAFではどちらの細胞走化性惹起作用が強くでるのかを検証し、共存した場合fMLPがPAFよりも強い走化性惹起作用を起こすことを見いだし、報告した(J Immunol Methods, 404, 59-70, 2014)。また好中球だけでなく別の炎症細胞であるマクロファージ系細胞の走化性についても報告した(J Immunol Methods, 393, 61-69, 2013)。次に、fMLP受容体(FPR1)とPAF受容体(PAFR)の細胞内情報伝達の違いを解析するために、これらのキメラ遺伝子のコンストラクトを作成した。これらの遺伝子(FPR1、PAFR、およびこれらのキメラ)を骨髄系細胞株およびリンパ系細胞株に遺伝子導入して発現させ、走化性などの細胞機能を解析する系を確立した。また、導入する遺伝子について、後の細胞内因子の探索のために6xHisタグを付加する改良を行った。これらの細胞株を用いてfMLP, PAFに対する走化性パターンの違いを解析することを試みた。現在、詳細に解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度中にfMLP受容体(FPR1)、PAF受容体(PAFR)およびこれらのキメラ遺伝子を発現させた細胞を用いて、遊走パターンの解析および細胞内伝達因子の探索を行う予定であった。しかしながら、fMLPとPAFの走化性惹起作用を確認し詳細に比較する作業、さらにマクロファージの遊走をチェックする作業、そしてこれら論文に報告(J Immunol Methods, 404, 59-70, 2014および J Immunol Methods, 393, 61-69, 2013)する作業を追加した。また、導入遺伝子を改良し細胞内因子の探索のために6xHisタグを付加する作業を行った。これらために、細胞内情報伝達因子の探索・同定の作業が遅延し、完了していない。
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