研究課題
基盤研究(C)
(1)リンパ組織におけるIL-33発現細胞種の同定と性状解析1-1.IL-33レポーターマウスの開発本申請以前に、申請者らは理化学研究所CDBとの共同研究でIL-33遺伝子ノックアウトマウスを作成した(PNAS 2010;107:18581)。このマウスはIL-33遺伝子のfirst ATG(最初の開始コドン)のあるexon1にGFP遺伝子 cDNAをノックインし、近接してネオマイシン耐性遺伝子の薬剤選択カセット(neo cassette)を挿入して、変異アリルを作成している。neo cassetteは、コンディショナルに欠失できるようにloxP配列で挟んだfloxed neo cassetteとしている。ネオマイシン耐性遺伝子発現カセットはプロモーター干渉によりごく近傍の遺伝子発現を強力に抑制することから、CAG-Creトランスジェニックマウス(理研バイオリソースセンターより導入ずみ)との交配によってneo cassetteをコンディショナルに欠損させることで、GFPの発現が期待できる。初年度は、このIL-33 GFPマウス系統の確立を目指し、次の交配ステップによりIL-33 GFPマウスの作成を行う。I. IL-33 -/- × CAG-Cre tg/tg II. IL-33 +/-: CAG-Cre tg/+ × +/+ (wild-type)(deletionをPCRでチェック、Creトランスジーンを持たない個体の選別) III. IL-33 GFP/+ ×IL-33 GFP/+(ホモの個体をPCRで選別し、IL-33 GFP/GFPマウスとする)しかしながら、マウス飼育室内での蟯虫、原虫、ノロウイルスの多重感染のために、コロニー復活に時間を要している。
3: やや遅れている
マウス飼育室内での蟯虫、原虫、ノロウイルスの多重感染のために、コロニー復活に時間を要している。しかしながら、I. IL-33 -/- × CAG-Cre tg/tg II. IL-33 +/-: CAG-Cre tg/+ × +/+ (wild-type)(deletionをPCRでチェック、Creトランスジーンを持たない個体の選別) III. IL-33 GFP/+ ×IL-33 GFP/+(ホモの個体をPCRで選別し、IL-33 GFP/GFPマウスとする)のうち、IIまでは進行している。
できるだけ早期に前年度計画のステップIIIまでを進行させ、以下の検討に進む。(1)リンパ組織におけるIL-33発現細胞種の同定と性状解析1-2.IL-33レポーターマウスを使ったリンパ組織のIL-33陽性細胞の単離と性状解析(サイトスピン、FACS、マイクロアレイ解析、機能試験)I. 脾臓或いはリンパ節から細胞を調整し、GFPを指標としてリンパ組織のIL-33発現細胞の単離をソーターで行う。ソートされた細胞のサイトスピン標本を作製し、ギムザ染色を行い、形態の観察を行う。種々の喘息モデルを誘導したマウスからもサンプリングし、比較を行う。II. 脾臓或いはリンパ節を単離し、GFPを指標としたリンパ組織のIL-33発現細胞を各種の免疫系細胞の細胞表面マーカーとの多重染色によってFACS解析を行うことで、GFP発現細胞のheterogeneityの有無と、細胞の同定が可能となる。発現している細胞群の絞り込みは探索的に行う。III. 絞り込まれた細胞表面マーカー及びGFPによって、脾臓或いはリンパ節より調整された細胞をソートし、リンパ組織のIL-33陽性細胞のmRNAマイクロアレイ解析を行う。このとき、比較検討のために、細胞を活性化する刺激が特定できている場合には、刺激した細胞を使って並行してmRNAマイクロアレイ解析を行う。IV. 同じくソートされたリンパ組織由来IL-33陽性細胞を用いて、サイトカイン産生レベルについてELISA法などを用いて評価を行う。
誘導性のIL-33遺伝子発現メカニズム2-1.IL-33の誘導性発現応答のカイネティクス I. IL-33発現応答のカイネティクスを調べる。誘導性の発現を確認する細胞は前項(1)の情報、単離のしやすさなどを参考に決定し、IL-1β、TNF刺激を中心に用いてIL-33の発現誘導カイネティクスを測定する。II. 初年度に作成したIL-33 GFPレポーターマウスを使用し、GFP蛍光量を指標にしたIL-33発現モニター系の構築を試みる。2-2.阻害剤を用いたIL-33の遺伝子発現誘導シグナルの探索IL-33遺伝子発現誘導の機構を明らかにするため、GFPを指標にしたIL-33発現モニター系を用いて、各種の市販阻害剤の検討を行う。(3)炎症性シグナルに対する核内IL-33機能の探索IL-33は細胞外に放出された場合にはIL-33受容体を介してNF-κBを活性化するシグナルを駆動する。しかし、「研究目的」部分でも記載したように、核内・細胞内でのIL-33はNF-κBを抑制するという報告がなされている(JImmunol 2011;187:1609)。しかしながら、申請者らが試験した複数の炎症性モデルにおいてはIL-33欠損マウスで炎症の増悪化は認められなかった(PNAS 2010;107:18581)。細胞内IL-33によるNF-κBシグナルの抑制が事実であったとしても、in vivoにおいてIL-33の欠損は炎症のネガティブフィードバックを大きく損なう結果をもたらさない可能性や遺伝子代償機構が働いている可能性もある。より精緻な結果を得るために、IL-33欠損マウスから得られる恒常的IL-33発現細胞や誘導性IL-33発現細胞を単離し、野生型との比較をmRNAマイクロアレイにて行う。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
J Immunol.
巻: 189 ページ: 3641-52
Allergol Int.
巻: 61 ページ: 265-73.
10.2332/allergolint.11-OA-0379.