研究課題
本研究では高病原性鳥インフルエンザウイルスH5N1 (H5N1-Flu) の人に対する感染のメカニズムを宿主側、ウイルス側の両面から解析していくことを主たる目的としている。具体的にはH5N1-Fluがヒトに低病原性の鳥インフルエンザウイルス (low pathogenic avian influenza virus: LPAIV) と比較してヒト呼吸器上皮細胞に高率に感染するのに必須な細胞内イベントを解析し、同時にそれに関わるウイルス遺伝子を同定することを目的としている。これら感染性の違いを生むメカニズムを明らかにするためA/Crow/Kyoto/53/2004 (H5N1)[H5N1-Flu]およびA/Duck/Hong Kong/820/80 (H5N3)[LPAIV]の細胞表面への吸着の程度について評価を行ったところ、細胞表面に吸着しているウイルス粒子の数は両ウイルス間で差はなかった。さらに蛍光標識したウイルスを用い、ウイルス粒子が細胞に侵入していく過程を共焦点レーザー顕微鏡にて継時的に評価を行ったところ、両ウイルスともに一定時間内に細胞内に完全に取り込まれることがわかった。以上のことからヒト呼吸器上皮由来細胞株に対しA/Crow/Kyoto/53/2004 (H5N1)[H5N1-Flu]、A/Duck/Hong Kong/820/80 (H5N3)[LPAIV]の間で感染性の差を生んでいるメカニズムは細胞侵入後の膜融合以降の過程にあることがわかった。現在はその詳細について解析を行っている。
2: おおむね順調に進展している
A/Crow/Kyoto/53/2004 (H5N1)とA/Duck/Hong Kong/820/80 (H5N3)で感染性の差を生んでいるメカニズムが細胞侵入後、膜融合以降の過程にあることが明らかとなり、メカニズム解析のための焦点が絞れたため。
A/Crow/Kyoto/53/2004 (H5N1)とA/Duck/Hong Kong/820/80 (H5N3)で感染性の差を生んでいるメカニズムについて、細胞侵入後、膜融合以降の過程に着目して解析を進めていくこととする。
当初の予定よりも実験がうまくいったので消耗品の購入量が若干減少したため。上記で生じた額は次年度の研究遂行に必要な物品費として使用する予定である。
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Cell
巻: 153 ページ: 112-125
10.1016/j.cell.2013.02.027