研究概要 |
エイズの治療を困難としている大きな理由にHIV-1の潜伏感染がある。現行の抗レトロウイルス多剤併用療法(cART)はエイズの発症を遅延させることができるが、潜伏感染しているHIV-1には無効であるため体内からウイルスを完全に除去することができない。従って潜伏感染期のHIV-1複製の誘導もしくは抑制の分子メカニズムを解明することはエイズ撲滅のための最も重要な課題の一つであり、抗レトロウイルス多剤併用療法と組み合わせることにより新たな治療法に繋がる可能性がある。 PI3キナーゼは、ホスファチジルイノシトール4,5-二リン酸(PtdIns(4,5)P2)のイノシトール環3位のヒドロキシル基をリン酸化し、ホスファチジルイノシトール3,4,5-三リン酸 (PtdIns(3,4,5)P3)産生する酵素である。産生されたホスファチジルイノシトール3,4,5-三リン酸は、プロテインキナーゼB/Aktを活性化を起こし、様々な生理作用の発現に関与する。さらにPI3キナーゼは、受容体型チロシンキナーゼによって活性化されるPI3キナーゼ p110α, p110β, p110δやGタンパク質共役受容体よって活性化されるPI3キナーゼ p110γが知られている。一方、PTENは、PIP3を基質とする脂質ホスファターゼで、PI3キナーゼ 経路を負に制御する癌抑制遺伝子である。 そこで我々は、HIV-1の潜伏感染に対してPI3キナーゼ/PTEN経路がどのように関与するのかを明らかにしたいと考えている。
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