研究課題/領域番号 |
24591487
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
時松 一成 大分大学, 医学部, 講師 (20347032)
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研究分担者 |
門田 淳一 大分大学, 医学部, 教授 (50233838)
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キーワード | 薬剤耐性菌 / 院内感染対策 |
研究概要 |
研究者らは、トリコスポロンは生体内に留置する医療デバイス(血管内留置カテーテル、尿道留置カテーテル)の表面に、バイオフィルムを形成し、これらは、国内での使用可能な抗真菌薬に耐性を示すことを明らかにした。トリコスポロンのバイオフィルム生成菌に、キレート剤であるエチレンジアミン四酢酸(EDTA)やエタノールを添加することにより、トリコスポロンのバイオフィルム形成能が低下することがわかった。これらの結果により、トリコスポロンの薬剤耐性化の機序に真菌のバイオフィルム形成関与していること、医療デバイス上で生成されたトリコスポロンのバイオフィルムに対しては、EDTAやエタノール治療(カテーテルロック療法)が有用であることが示唆された。 一方、研究者らは、臨床から分離された多剤耐性傾向の強いトリコスポロンの培養液中にEDTAを添加すると、トリコスポロンの発育が有意に抑制されることを見出した。すなわち、EDTAは、それ単独でも抗真菌作用を有している可能性があることが示された。 研究者らが発見した抗真菌薬耐性のトリコスポロンのERG11の点変異部位をSaccharomyces cerevisiaeで発現したところ、アゾール系薬への感受性著しく低下することがわかった。このことにより、アゾール系薬の標的蛋白であるERG11の点変異が、トリコスポロンの耐性機序に、重要な役割を担っていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トリコスポロンに対する薬剤耐性の機序として、バイオフィルム形成や、アゾール系薬の標的蛋白であるERG11の点変異であることなど、トリコスポロンの薬剤耐性の機序を明らかにすることができた。また、抗真菌薬以外の物質(EDTA)が、抗バイオフィルム作用や、抗真菌作用があることも明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
生体内においても抗真菌薬が接触することでERG11の点変異が生じるのか、生体内おけるEDTAの抗トリコスポロン作用と毒性について、マウスを用いた播種性感染モデルで検討を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
ラジオアイソトープ標識した抗真菌薬を用い薬剤排泄ポンプの関与を検討する予定であったが、予備実験において、コントロール株と耐性株では、薬剤の取り込みや排泄に差が認められなかったため、ラジオアイソトープの購入を見合わせた。 薬剤耐性機序には、薬剤排泄ポンプの意義は明らかにならなかったが、薬剤標的タンパクの点変異が関与していることが明らかになったため、次年度には、標的タンパクの解析に充てることにしたい。
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