研究課題
重症感染症(例えば敗血症など)において、脂質代謝経路であるアラキドン酸カスケードが活性化しその病態に関与することが報告されている。しかし、アラキドン酸代謝物であるプロスタグランジン(PG)D2と、その受容体の一つであるCRTH2は、アレルギー性炎症での寄与が報告されているものの、重症感染症における役割は明らかではない。そこで本研究は、重症感染症におけるPGD2/CRTH2経路を介する免疫機構に関して、マウスモデルを用いて検討する事を目的とした。本年度は、前年度までにえられた結果として、CRTH2ノックアウトマウスの敗血症において生存率が上昇し保護的効果がみられた事、血液及び腹腔内の細菌数を検討したところ、CRTH2ノックアウトマウスをの方が有意に細菌数の減少が見られた事、の機序に関して特に好中球の作用に着目して検討をさらに継続して加えた。CRTH2ノックアウトマウスにおいては、腹腔内に好中球の集積が有意に増強し、なかでもCXCR2陽性の好中球が増強していた。好中球のマーカーであるGr-1の抗体や、CXCR2抗体の投与より、CRTH2 ノックアウトマウスの生存率における保護的効果が減弱したことから、CRTH2ノックアウトマウスの保護的効果の機序にCXCR2陽性の好中球の腹腔内への集積が寄与していると考えられた。さらに感染2時間後の末梢好中球を採取し、CXCR2プロモーター領域のヒストンH3のアセチル化を検討したところ、、野生型では低下するが、CRTH2-/-マウスでは低下せず、敗血症におけるCXCR2の発現はエピジェネティック制御を受けることが示唆された。
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