研究課題/領域番号 |
24591490
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
斧 康雄 帝京大学, 医学部, 教授 (10177272)
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研究分担者 |
祖母井 庸之 帝京大学, 医学部, 講師 (10311416)
越尾 修 帝京大学, 医学部, 講師 (30365986)
永川 茂 帝京大学, 医学部, 助教 (50266300)
菊地 弘敏 帝京大学, 医学部, 講師 (80338681)
上田 たかね 帝京大学, 医学部, 助教 (80459312)
中野 竜一 帝京大学, 医学部, 助教 (80433712)
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キーワード | アシネトバクター / マウス肺感染モデル / 好中球細胞外トラップ / リポ多糖体 / 好中球内遺伝子発現 / マスト細胞 / TNF-α / 家畜由来株 |
研究概要 |
1、Acinetobacter baumanniiは緑膿菌や大腸菌に比べて好中球に貪食されにくいことを報告し、莢膜形成が一因であることを確認している。今回、ヒト好中球を A. baumanni標準株または緑膿菌 PAO1 株で刺激し、1時間培養後の好中球細胞外トラップ (neutrophil extracellular traps: NETs) 形成を評価した。 好中球をPAO-1株で刺激するとNETs が形成されたが、 A. baumannii刺激でのNETs 形成は極めて少なかった。 2、A. baumanniiを正常マウス(C3H/HeN)の肺に感染させ生存率を標準株(ATCC19606)と臨床分離株で比較検討した。肺感染後2週間の生存期間で比較すると本菌標準株は臨床分離株より致死性が高かったが、緑膿菌(PAO-1株)の致死性より低かった。 3、E. coli由来LPS(B4)とA. baumannii 標準株及びMDRA由来LPSを種々の濃度で好中球に作用させ、好中球内のTLR2, TLR4, CD14, TNFαの4種類の遺伝子発現変化を定量解析した結果、MDRAによる遺伝子発現誘導がLPS添加濃度依存的に最も強く、次いでB4であった。本菌由来LPSのヒト好中球活性酸素誘導能に対するpriming効果は緑膿菌由来LPSより強く、E. coli由来LPS(B4)と同等であった。 4、ヒト由来マスト細胞株LAD2は、本菌を認識しTNF-αを放出したが、TNF-α、CCL4、IL-8のmRNAの発現増強も見られ、マスト細胞は本菌を認識し応答した。 5、家畜由来アシネトバクター属菌の実態調査で、アシネトバクター属菌は牛豚の糞便や鼻汁から分離され、特に豚の20%以上の個体から分離され,どれもセフェム耐性株であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト好中球とアシネトバクターの相互作用の解析に関しては、緑膿菌と比較して貪食抵抗性が高いこと、NETs形成は弱いことなどを明らかにした。マスト細胞も本菌に応答しTNFαなどのサイトカインを産生すること、本菌由来LPSは大腸菌由来LPSと比較しても好中球機能や細胞内遺伝子発現に及ぼす効果に差がないことを示した。また、マウス肺炎モデルでの病原性は緑膿菌より弱いことも明らかにした。さらに、家畜などの腸管保菌調査も実施し現在解析中である。多剤耐性アシネトバクターのLAMP法での迅速検出法も開発した(投稿準備中)。
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今後の研究の推進方策 |
1、本菌の外膜蛋白(OMP)の薬剤耐性への関与、好中球機能に及ぼす影響も残り1年かけて検討予定である。 2、これまで2年間実施してきた上記の研究成果を論文として報告予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
1、計画した予算よりも試薬代金などが安く購入できたため。 2、英文論文校正や投稿代金に一部予算をあてる予定であったが、論文作製が遅れたため次年度に使用予定であるため。 次年度(最終年度)は、主に試薬類の購入や学会参加費、論文作成費に予算をあてる予定である。
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