研究実績の概要 |
研究計画:1)ヒトサイトメガロウイルス(HCMV) 感染細胞に対するトリシン (4’,5,7-trihydroxy- 3’, 5’-dimethoxy flavone) の作用に関連するマイクロRNA(miRNA)を網羅的に解析して、その候補分子とトリシン作用との関連性を再現する。および、2)HCMV感染細胞に対するトリシン作用に関連して発現する蛋白質を網羅的に解析して、その候補分子とトリシン作用との関連性を検証する。 H26年度の成果:1、H25年度に引き続き、HCMV感染およびトリシン処理により変動する新たなケモカイン(CCL2)に関して更に検討を加え、CCL2ノックダウン細胞およびリガンドを用いた実験から、HCMVの増殖はCCL2に大きく依存している事、トリシンによりCCL2およびCCL2受容体であるCCR2の発現が抑制される事等を遺伝子レベルと蛋白質レベルの両方で明らかにした。その結果、トリシンの抗HCMV作用のメカニズムの1つとして、CCL2-CCR2依存性の経路の可能性を示す事ができた。 2、トリシンの細胞への作用を明らかにする目的で、細胞内シグナル伝達経路について検討した。HCMV感染細胞内の種々のシグナル分子を検討した結果、STAT3のリン酸化蛋白質が誘導された。ここにトリシンを作用させると、STAT3のリン酸化が更に強く持続される事が明らかとなった。さらに興味深い事は、トリシン処理だけでも、STAT3のリン酸化蛋白質を誘導することが示された。このことは、トリシンはHCMV感染に対してのみならず、STAT3のリン酸化を中心に種々の分子の細胞内活性化に関与している可能性が示唆された。
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