研究課題
本研究の目的は、本邦において、臨床的に問題となっているbeta-lactamase-negative ampicillin-resistant (BLNAR)株などの薬剤耐性菌を含めたインフルエンザ菌の難治化の要因を薬剤耐性、細胞内寄生およびバイオフィルムのそれぞれについて、どの程度難治化の要因となっているかを解析し、かつ治療戦略をたてることである。小児急性中耳炎患者より分離されたインフルエンザ菌株の内、繰り返し中耳炎が発症した患者から分離されたBLNAR株を用い、薬剤感受性試験やバイオフィルム産生度及び細胞内侵入率についての解析を行った。また、in vitroでの人気道上皮細胞への感染実験を行い、また上記の菌株を対象とし、セフォタキシム及びトスフロキサシンの投与を行い、抗生剤による菌体の変化をfocused ion beam (FIB/SEM) システムを用いて観察した。結果として、人気道上皮細胞表面上の菌だけではなく、細胞内侵入していた菌株も菌体の変形や破裂などの著しい形態変化像が観察された。今回の研究結果により、キノロン系抗生物質であるトスフロキサシンの殺菌作用が高いことが証明され、同剤の小児への使用が難治性小児中耳炎の有効な治療となる可能性があることが示唆された。
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