研究課題/領域番号 |
24591502
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
藤井 克則 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (70344992)
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キーワード | ヘッジホッグ / Gorlin症候群 / SMO / GLI / PTCH1 |
研究概要 |
本研究の目的はヒト線維芽細胞を用いてヘッジホッグシグナルの解析を行うことである。ヘッジホッグ経路はリガンドのHedgehog、受容体のPTCH1、隣接タンパクのSMO、転写因子のGLIからなる高度に保存されたPTCH1抑制性の細胞増殖経路である。ショウジョウバエおよびマウスでの検討は数多いが、ヒト細胞を用いた研究は極めて少ない。本研究ではヒトの形態形成および腫瘍発生に深く関与するヘッジホッグ経路についてヒト線維芽細胞を用いて解析することとした。実験にはGorlin症候群でPTCH1変異を持つ皮膚線維芽細胞と正常コントロール線維芽細胞についてGLIのRT-PCR解析を行った。その結果PTCH変異を持つ複数のヒト細胞でSMO, GLIの転写が亢進していることを初めて見出した。中でもGLIの亢進は高度であり、かつこの転写亢進は栄養飢餓状態下においてリガンドであるヘッジホッグを加えたときに最大となり、SMO阻害剤であるcyclopamineによって抑制された。このことからこの栄養飢餓状態におけるGLIの亢進はヘッジホッグ経路依存性であることが確かめられた。またこれらヒト線維芽細胞を用いてRNAパスウエイ解析を施行し、Wntシグナルの亢進が付随することを見出した。これらはヒト細胞においてもヘッジホッグ経路は刺激に応じた細胞応答に重要な役割を果たしており、それに伴って別経路の関連タンパクも協働して発現していることが明らかになった。ヘッジホッグは細胞アンテナとしてのprimary ciliaを経由することが近年知られており、現在ヒト皮膚線維芽細胞におけるprimary ciliaの役割についてさらに解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初目的とした5項目のうち3項目について研究は進展し、一部論文化を行った。骨芽細胞系におけるヘッジホッグシグナリングについてはMAPKカスケードとの相互作用を明らかにし現在英文誌にin pressの状態である。放射線照射後のタンパク質プロファイリングも順調に進んでおり、解析の最終段階にある。ヘッジホッグ経路阻害剤であるcyclopamineの細胞学的作用については皮膚線維芽細胞を用いた解析でヒト細胞でも同様に阻害効果を持つことを証明した。またNBCCS患者の骨密度の定量評価もすでに20名を超え、現在メタ解析を行って有意差の有無を検討している。ヘッジホッグシグナリングとWntシグナリングのクロストークについては、ヒト線維芽細胞においてRNAプロファイリングを行い、そのクロストークが存在することを確認した。これらの研究状況を鑑みるとき交付申請書に記載した「研究の目的」の達成度についてはおおむね順調に進捗していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
現在まで交付申請書に記載した「研究の目的」の達成度についてはおおむね順調に進捗している。これらの研究は予定された課題の遂行に加えて、今後はprimary ciliaがヒト線維芽細胞でどのような役割を果たしているかヘッジホッグシグナルとの関連で調査してゆく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画よりも実験が早く進み、実験所要期間が短縮し実験試薬が充足したために次年度使用額が生ずることになった。また次年度に持ち越す研究費(培養細胞費)が新たに生じたため会計年度が2か年にわたり購入することとなった。 現在当初計画以外に、新たに判明したprimary ciliaのヘッジホッグ経路における機能解析に使用することを考慮している。これらにより当初目的を超える科学的成果が得られることが期待される。
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