研究課題/領域番号 |
24591504
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
大山 建司 山梨大学, 医学工学総合研究部, 医学研究員 (80051861)
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キーワード | 抗ミュラー管ホルモン / 抗ミュラー管ホルモン受容体 / 精子形成 / 精母細胞 / 精子細胞 / セルトリ細胞 / 精巣 / 性成熟 |
研究概要 |
本研究の目的は未成熟期に高濃度で分泌されている抗ミュラー管ホルモン(AMH)の生理作用をラット精巣を用いて明らかにすることである。 本年度は、AMH、AMHR2が精子形成にどのように関与しているかを検討した。AMH抗体、AMHR2抗体を用いた免疫染色を10、15、21、35、49日齢精巣で行った。精子形成が精祖細胞に止まっている15日齢までは、AMH、AMHR2はセルトリ細胞にのみ染色された。AMH、AMHR2は21日齢に出現する精母細胞、35日齢に出現するround、elongated精母細胞に強く染色された。しかし、精子形成が完成する49日齢精巣では、精母細胞と精子細胞で染色されるstageに差がみられた。また、49日齢の精子細胞では、AMHでは染色されない残余小体内にもAMHR2が強く染色された。精母細胞、精子細胞内でのAMH、AMHR2の発現の報告はないので、精巣をコラゲナーゼ処理して、間質細胞、セルトリ細胞、生殖細胞に分けて採取し、AMH、AMHR2 mRNAの発現を検討した。セルトリ細胞では、未成熟細胞に特異的なNgfr、成熟細胞に特異的なRhox5の発現も、また生殖細胞では、精母細胞に特異的なScp1、精子細胞に特異的なRosbinの発現を同時に検討した。AMHは21日齢では、Ngfrが強く発現しているセルトリ細胞で強発現し、Scp1が強く発現している生殖細胞で発現していた。49日齢でも、Ngfrが優位に発現しているセルトリ細胞で発現し、Scp1が強く発現している生殖細胞で発現していた。Rosbin発現が増加している生殖細胞ではAMH発現は減少していた。AMHR2もほぼ同様の結果であった。以上の結果は、AMH、AMHR2は、主として精母細胞で発現し、生成された蛋白は精子細胞に移行していることを強く示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来、AMHは精巣ではセルトリ細胞に存在すると報告されていたが、本研究でAMH、AMHR2が精粗細胞には発現せず、精毋細胞以降に発現していること、さらに発現が精子形成ステージによって異なることが明らかになった。このことから、研究当初仮定していた、AMH が未成熟期の精子形成の進展を抑制すると同時に、精子形成サイクルの進行に関与していることを強く示唆する結果が得られたと考えている。精毋細胞、精子細胞はAMH、AMHR2の両者を発現、生成しており、精巣内でパラクリン作用により効果を発揮していると考えられる。AMHの新たな生理作用として、精子の形態変化への関与が推測される結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
1. 未成熟精巣セルトリ細胞から分泌されるAMHと成熟精巣精子細胞から分泌されるAMHの作用の違いを明らかにするため、セルトリ細胞と生殖細胞を分取して、さらに機能分類した細胞でのAMH、AMHR2発現を検討していく。 2. 購入したラットリコンビナントAMHの生物活性を確認し、活性が確認できれば、精巣内投与により精子形成の進行抑制、精子形成サイクルへの関与を検討する。未成熟精巣への投与では精子形成進展の抑制へのAMHの関与を検討する。また、成熟精巣へのAMH投与は、精子形態変化への関与を検討する。 3. AMHは精巣以外に脳でも発現しており、脳の性分化(脳の性差)への関与も示唆される。脳内にはアンドロゲン受容体も多数存在し、セルトリ細胞同様、AMHとの相互作用も推測される。しかし脳内のAMHR2分布は明らかになっていない。この検討はAMH の脳内における作用を明らかにする上で重要であり、今後の検討課題である。
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