研究実績の概要 |
本研究は、抗ミュラー管ホルモン(AMH)の精細管内における生理作用をラット精巣を用いて明らかにすることである。AMHがライディヒ細胞の成熟、テストステロン産生の抑制的に働くことは知られているが、生殖細胞への作用は明らかではない。24,25年度の研究で、AMHおよびAMHR2蛋白が精毋細胞、精子細胞に存在することを初めて明らかにした。 26年度は、49日齢精巣を用いてAMHmRNAの発現部位とAMHの細胞内情報伝達系について検討した。AMHの細胞内情報伝達に関しては、精巣のコラゲナーゼ処理、パーコール処理により単離作成した生殖細胞を用いて検討した。49日齢精巣のIn situ hybridizationの結果、AMHおよびAMHR2は精毋細胞で発現が認められた。精子細胞でのAMHおよびAMHR2mRNAの発現は確認できなかった。この結果はAMHがセルトリ細胞以外に精毋細胞でも産生されていること、精毋細胞で産生されたAMH、AMHR2蛋白が精子細胞に移行し、精子形成に関与していることを強く示唆している。精子細胞におけるAMHとAMHR2発現は精子形成段階によって異なっており、精子の形態変化に関与している可能性が示唆された。精細管内において、セルトリ細胞、精毋細胞から時期特異的に産生されたAMHは精子細胞膜のAMHR2と結合して効果を発揮する。本年度の研究で、AMHの細胞内情報伝達に関与していると報告されているSmad1,5,8を遊離生殖細胞が発現していることを確認した。また、生殖細胞培養系にAMH抗体、AMHR2抗体を添加すると、AMH、AMHR2、Smad1,5,8発現が変化することから、精子細胞で、AMHはSmad系を介して作用していると考えられた。 本研究は、生殖細胞がAMHを産生し、パラクリン作用でAMHR2を介して精子細胞に直接作用していることを初めて明らかにした。
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