研究課題
神経堤細胞由来の軟骨前駆細胞を用いた軟骨・骨分化誘導システムを用いて、ヒト多能性幹細胞から形成される軟骨・骨の表現型評価法の確立を試みた。ES/iPS細胞を無血清培養条件下でTGF/Nodal/ActivinインヒビターやbFGFを添加するとCD271+CD73+間葉系細胞を大量に増幅した。この細胞を三次元培養すると均質な軟骨ペレットが形成され、免疫不全マウスに皮下移植すると巨大に成長した骨・軟骨ペレットが得られた。病理組織学的検討では軟骨組織と骨組織が混在する内軟骨性骨化が再現されていた。CINCA症候群はNLRP3変異による自己炎症性疾患で、骨端軟骨板過形成が特徴所見の一つである。正常組織におけるNLPR3の発現は血液細胞と軟骨のみであるが、本症候群における骨端軟骨板過形成の機序は不明である。そのため、発生初期の病態を充実に模倣しうるiPS細胞を用いた研究を行うこととした。NLPR3体細胞モザイクを有するCINCA症候群の患者から変異のあるiPS細胞と変異のないiPS細胞を作製した。得られたiPS細胞から分化誘導した軟骨前駆細胞を用いて三次元軟骨分化誘導を行った。野生型iPS細胞と比較して変異型iPS細胞由来の軟骨前駆細胞は有意に巨大な軟骨組織を形成した。軟骨前駆細胞を免疫不全マウスに皮下移植しすると、野生型iPS細胞と比較して、変異型iPS細胞由来軟骨前駆細胞を移植したマウスでは巨大な骨・軟骨組織を形成した。病理組織学的検討では、野生型iPS細胞由来軟骨前駆細胞を移植したマウスではほぼ均一な骨組織を認めたのに対して、変異型iPS細胞由来軟骨前駆細胞を移植したマウスでは幼弱な軟骨細胞の無秩序な増生を認めた。患者由来のiPS細胞を用いることにより、本症候群の骨端軟骨板における過形成を特徴とする骨・軟骨形成異常を忠実に再現できることが明らかとなった。
すべて 2015
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Arthritis Rheumatol
巻: 67 ページ: 302-314
10.1002/art.38912