本研究ではFCMD患者の治療実現を目標とし初年度にはスプライシング異常を標的とするアンチセンス療法の確立に向け薬剤の至適化、毒性の検討や薬剤修飾、ドラッグデリバリーシステム(DDS)の構築をモデル動物及び患者由来細胞系を用い行った。その結果至適な化合物を1剤選択し、薬剤のスプライシング異常に対する効果の検討も行った。 最終年度では、AONとして、人体投与可能なアンチセンス核酸化合物であるモルフォリノ(PMO)、が安全性や実薬への可能性として最も高いことが世界的にも認識されたこともあり、PMOをもちいた至適核酸化合物の選択を行い、人に対する臨床試験にむけた安全性試験の準備を行った。ドラッグデリバリーに関しては、当初の予定していたポリメタクリルメチレートではなく、より有効性の高いバブル化合物を用い、全身あるいは、胎盤、脳へのデリバリーを検討した。その有効性については今後さらなる検討が必要であるが、脳の先天異常も認められる福山型筋ジストロフィーに対する脳内・胎児治療として今後治療法の可能性のひとつとして期待できると考える。また、臨床症状と遺伝型の相関をみて、効果判定を評価するために、挿入変異ホモ型以外の福山型筋ジストロフィーの遺伝子検索を行うため、次世代シークエンサーをもちいた診断や、モデルマウスの遺伝子型の検討を行った。フクチンの酵素補充に関しては、期間内に実施することができなかったが、今後、活性測定の構想を練って将来的には酵素活性の測定を実現したいと考えている。この成果は本邦発、ファーストインヒューマンの臨床試験の実現への可能性を大きくする成果である。
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