研究課題/領域番号 |
24591515
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
井原 健二 九州大学, 大学病院, 准教授 (80294932)
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研究分担者 |
石井 加奈子 九州大学, 大学病院, 研究員 (90400332)
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キーワード | 肥満 / 脂肪 / マクロファージ / アディポネクチン / 成長ホルモン |
研究概要 |
肥満はて成人のみならず小児においても年々増加傾向を示している事からも、社会的に大きな問題となっている。肥満は体脂肪が過剰に蓄積した状態と定義され,細胞レベルでは成熟脂肪細胞の肥大化(サイズの増大)と脂肪細胞数の増加により決定されるが,脂肪組織には成熟脂肪細胞のみならず,前駆脂肪細胞,血管構成細胞,マクロファージなどの非成熟脂肪細胞分画が含まれている。肥満の脂肪組織にはマクロファージの浸潤が増加することが報告されており,脂肪組織における炎症性変化を増大し,これによりアディポサイトカイン産生調節の破綻につながる可能性が推定されている。 以上の背景をもとに、私たちは小児の成長と発達に関わるホルモンの単球系細胞の活性化を介した脂肪細胞の分化増殖作用を明らかにし、小児のメタボリック症候群成立の分子基盤を解明するための研究を行う。まず、小児期の発達発育を規定する成長ホルモンによるマクロファージ/単球の分化や成熟への作用を明らかにする。そして成長ホルモンで刺激を受けたマクロファージ/単球について、脂肪細胞の増殖や炎症性アディポサイトカインの産生への作用を明らかにする。次に、上記で明らかになった最も重要と推定される因子について、脂肪前駆細胞を直接刺激することで発現が変化する遺伝子群について網羅的に評価する。最後に、ヒト個体における生物学的意義を明らかにするため、成長ホルモン治療中の低出生体重児(SGA児)の血清・末梢血単核球を用いたデータ解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小児期の発達発育を規定するホルモンの中で、成長ホルモンがマクロファージ/単球の分化や成熟への作用について検討した。 脂肪細胞株3T3-L1細胞とマクロファージ系細胞株RAW264細胞をTrans-well dishを用いた分離共培養システムを構築した。共培養後にそれぞれの細胞からRNAを抽出しさまざまな遺伝子発現の変化を検討するとともに培養液中のサイトカイン・アディポサイトカインをELISA法により測定した。その結果、Il-6、TNF-αの上昇、Adiponectinの低下を認めた。次にRAW264細胞の成長ホルモンによる前刺激により、その後にAdipocyteと共培養した場合のAdiponectin産生量の低下の程度が減少した(相対的な産生が増加した)。このことはGHで刺激された後のMacrophage が産生する、免疫機能に関連する液性因子量の変化が、AdipocyteのAdiponectin発現量に影響を及ぼすと推定された。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究に引き続き、以下の実験の準備を進めている。 A)培養細胞系研究の継続 RAW264細胞にGHを添加することによる変化する遺伝子群について、マイクロアレイを用いた網羅的にスクリーニングする。そしてマイクロアレイで有意な変化を認めた遺伝子やPathwayに関して、Pathwayを特異的に阻害する薬剤で前処理したマクロファージにGH刺激し、脂肪細胞と共培養することで、脂肪細胞におけるAdiponectinの変化が消失することを確認する。 B)臨床応用に向けた研究としては、上記で見いだされる「Keyファクター」を中心に、成長ホルモン治療中の低出生体重児(SGA児)の成長ホルモンと脂質代謝の関連する臨床データを解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究に関わる検査を外部検査機関に一部委託したため、その他に分類される研究費用が予算よりも多くなった。 次年度の物品費の予算範囲内で調整する。
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