研究課題
本研究の目的は、糖質の毒性を緩和する、ピルビン酸ナトリウム、アミノ酸、MCT (medium-chain triglyceride)の作用機構の解明に加え、マウスモデルを用いて、発症予防につながると考えられる適応現象の分子機構の解明を目指した研究を行い、重篤なCTLN2発症予防の方策を組み立てて行くことである。現在までに得られた成果は以下のとおりである。(1)シトリン欠損症の治療にピルビン酸ナトリウムが有効な理由は細胞質NADHの酸化によるNAD+の再生にあると考えられる。しかし、アミノ酸とMCT (medium-chain triglyceride)の作用については不明であった。今回、ショ糖投与以外による成人発症II型シトルリン血症(CTLN2)誘因として、エタノール投与による肝内G3P上昇への効果を検討した。その結果、アミノ酸であるアラニンの同時投与はエタノールによる肝内glycerol 3-phosphate (G3P)の上昇をも抑制することを見出し、ショ糖に特異的ではなく、細胞質NADH上昇に一般的に有効であること、また、アラニン以外でもアルギニンにも同様の効果があることを見出した。(2)モデルマウスはCTLN2発症誘因である高濃度のショ糖、エタノール、グリセロールいずれをも忌避することから共通の肝内代謝物変動を追求し、G3Pの上昇とATP(またはtotal adenine nucleotide)濃度の低下が同時に起こることが重要であることを見出した。このことは上記2因子のどちらかを抑制すれば、治療効果を発揮する可能性が見いだせたことを示唆する。(3)肝内G3Pレベルの変動がモデルマウスにおいて血漿グリセロールに反映することを見出した。このことは肝G3P濃度を測定するのではなく、血漿グリセロールを測定してより容易に肝内病態を把握可能であることを明らかにした。
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Tohoku J Exp Med.
巻: 233 ページ: 275-281
http://irda-genetics.kuma-u.jp/yamamura/index.html