研究課題/領域番号 |
24591519
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研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
福光 秀文 岐阜薬科大学, 薬学部, 准教授 (00308280)
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キーワード | 選択的注意 / 脳由来神経栄養因子 / 大脳皮質 |
研究概要 |
本研究では選択的注意学習に関わる分子基盤の不全が自閉症スペクトラム障害の中核症状である社会適応能の発達に及ぼす影響を明らかにするために、以下の項目に関する研究を実施している。① 選択的注意学習および社会性行動における脳由来神経栄養因子 (BDNF) 遺伝子 (自閉症スペクトラム障害との関与が示唆されている) の役割、② 自閉症モデル動物で発見した転写因子 Cux1、Brn1の発現低下が神経細胞における BDNF シグナル伝達に及ぼす影響 (in vitro)、選択的注意能および社会適応能の発達に及ぼす影響 (in vivo) に関する解析である。 前年度までに、遺伝子改変マウスを用いて、BDNF 遺伝子の発現が選択的注意学習に必須であることを明らかにしていた。本年度は免疫染色法および阻害剤を用いて、BDNF/MAPK カスケードが重要な役割を果たしている可能性を示唆する結果を得た。また、BDNF 遺伝子変異マウスでは社会性行動に異常があること、社会性行動と選択的注意学習タスク試行時に神経機能が亢進する領域が一部重複することを明らかにした。 Cux1 およびBrn1 遺伝子ノックダウンが培養神経細胞における BDNF シグナル伝達に及ぼす影響についてはレトロウイルス発現抑制ベクター系を用いた実験により解析中である。in vivo 解析については、大脳皮質の発達時期特異的に遺伝子を欠損させることを計画しており、本年度は CRISPR/gRNA を用いて薬剤誘導型 Cre マウス ES 細胞を樹立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
BDNF 遺伝子の選択的注意学習および社会性行動に及ぼす影響に関する研究にはついてはおおむね予定通りに進行しているが、Cux1、Brn1 の in vivo の機能解析が若干遅れている。当初、RNA 干渉法により大脳皮質特異的に標的遺伝子の発現を抑制することを計画していたが、遺伝子ノックダウンでは部分的に残った遺伝子発現により、表現型があらわれない可能性もある。そこで、近年開発され特異性の改良が精力的に進められている CRISPR/gRNA 系を用いてマウスを作製し解析することに変更したため。
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今後の研究の推進方策 |
A. 選択的注意学習には BDNF/MAPK カスケードが重要な働きをすることが明らかになったため、同シグナルの阻害剤をマウスの発達期に投与して、社会性の発達に及ぼす影響を調べる。 B. Cux1, Brn1 の大脳皮質発達時期特異的な遺伝子欠損マウスについては、ES 細胞レベルで遺伝子改変を行い、8細胞期にES細胞を移植することでF0世代で機能解析を行うことで、研究計画の迅速な実施を可能にする。大脳皮質特異的な Cre 発現マウス ES 細胞は樹立できたので、今後レポーター遺伝子の発現確認を行った後、Cux1 および Brn1 遺伝子をコンディショナルに欠損させるマウス ES を樹立、動物を作製し、解析する。培養下の神経細胞の BDNF シグナル伝達に及ぼす転写因子の機能については予定通りに進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画の軽度遅延のため 前年度予定分を含め、動物代、飼育関連費用、物品費などに使用する。
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