研究課題/領域番号 |
24591520
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
水野 晴夫 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70363942)
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研究分担者 |
齋藤 伸治 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00281824)
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キーワード | 性腺 / 思春期 / ゴナドトロピン療法 |
研究概要 |
解析対象の遺伝子リストの作成に時間を要してしまったが、すでに、ゴナドトロピン分泌に関係することが報告されている48個の遺伝子にターゲットを絞り、低ゴナドトロピン性性腺機能低下症の患者を対象に、当大学でイオントレントによる次世代シークエンス技術を用い、すでに、KAL1、FGFR1変異など複数の変異を同定している。 当初の計画では、生物学的には甚大な影響を与えない軽度な二次性徴の早発、遅発患者の解析を予定していたが、次世代シークエンスでの解析の同意を得ることが難しい状況となった。ただし、日本人男性・女性の平均から3年程度以上の早発・遅発の症例に関しては、病的意義のある場合も多く、とりあえず、男児で14歳、女児で13歳になっても二次性徴の発来しない児約50名から文書による同意を得て、解析することができた。 興味深いのは、低ゴナドトロピン性性腺機能低下症患者に対するゴナドトロピン療法に対する反応性の違いである。男子低ゴナドトロピン性性腺機能低下症の児、とりわけ、先天性の児では精巣の発育が悪く、妊孕性獲得には困難を要する場合が多い。最近、このような男児に対し、rhFSHを先行投与するほうが妊孕性獲得に好結果であることが報告されている(Dwyer AA et al. J Clin Endocrinol Metab. 98:E1790-5, 2013)。まだ、すべての症例で解析が完了していないが、FGFR1異常例では、hCGの継続投与に反応しない症例でもrhFSHでは精巣の発育、テストステロン産生能が改善しており、2014年9月にダブリンで開催される第53回欧州小児内分泌学会に投稿中である。このように、正確な遺伝子診断を行うことが、精子形成治療法を選択する上で重要になってくる可能性があり、現在症例を集積して検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、すでに、ゴナドトロピン分泌に関係することが報告されている48個の遺伝子にターゲットを絞り、低ゴナドトロピン性性腺機能低下症の患者を対象に、当大学でイオントレントによる次世代シークエンス技術を用い、すでに、KAL1、FGFR1変異など複数の変異を同定している。また、思春期早発症患者の集積もほぼ終わり、ターゲットを絞り、近日中に網羅的遺伝子解析を行っていく予定である。当初の予定では、病的とも言い難い日本人の平均から2年程度前後する早発、遅発の患者の解析も行う予定であったが、同意をいただくことが難しく、明らかに病的と考えられる児の解析に絞った形にはなっているが、これまで経験的な治療に依存していた、思春期早発症、遅発症の患者の治療について、確実な遺伝子解析の情報に基づいて予後の予測、適確な治療方針の決定ができる可能性が上がっており、当初の目的に向かいほぼ順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
低ゴナドトロピン性性腺機能低下症については、すでに遺伝子の解析が進んでおり、遺伝子型からゴナドトロピン療法に対する反応性の予測、また hCG単独で開始するのではなく、最初からrhFSH先行投与を行う方が適切なのかなど、実際の臨床に役立つ情報を提供していく予定である。また、思春期早発症患者においては、遺伝子解析の結果、思春期の早発に遺伝的な要因が関与していると判明した場合、その次子、さらに次世代の子どもたちの二次性徴の開始予測がある程度可能となる。待機的に成長・発育を見守ることが可能となるような臨床に役立つ情報が提供できることになる。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初、ターゲット遺伝子リストの検索に時間を要したこと、次世代シークエンサーを稼働させるのに予想以上の時間がかかってしまったため、その間、対象患者の選定、同意の取得、検体の収集に加えて、臨床的な研究を先行して行っていたため。 思春期早発症のターゲット遺伝子の選定と次世代シークエンサー(イオントレント)で解析するためのIon Ampliseq Customer Panelの購入、また、早発症・遅発症とも変異の可能性がある遺伝子を従来型のキャピラリー型シークエンス法による確認実験のための試薬、さらに、機能解析に用いる試薬などを購入していく予定である。
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