研究課題
基盤研究(C)
高インスリン高アンモニア血症はGlutamate Dehydrogenase (GDH)のGTPの抑制制御が失われるため、GDH活性の上昇をきたし、肝細胞で高アンモニア血症を膵β細胞で高インスリン血症をもたらす。高アンモニア血症の原因としてはglutamateの減少に伴うN-acetylglutamateの産生障害、カルバミルリン酸合成酵素の活性化障害が原因であるとされているが、その発症機序は必ずしも明らかではない。高アンモニア血症の発症機構の解明と治療法の開発のために、ヒト高インスリン高アンモニア血症で発見された遺伝子変異であるL413V GDHcDNAをユニバーサルに発現するトランスジェニックマウスを作成した。ヘテロのトランスジェニックマウスではGDH活性の上昇とglutamateからα-oxoglutarateへの産生が増加し、血糖の低下とアンモニアの上昇がわずかに認められた。尿素サイクルでのオルニチンからアルギニンには量的変化はなかった。N-acetylglutamateの増加はすべての臓器で認めていない。ヘテロマウスではヒトのような著明な症状を示さないため、GDH異常のホモマウスを必要としている。ホモマウスの血糖、アンモニアチェック、肝での基礎GDH活性とGTPによる酵素活性の抑制を測定する。また、臓器間の代謝ネットワークでのGDH遺伝子異常の影響を明らかにするため、肝臓、心臓、脳でのメタボローム解析を行っている。
3: やや遅れている
GDH異常ヘテロマウスの飼育に問題が生じ、凍結胚からの再構築を行った。そのために、ホモマウスの作成と検証が遅れた。各臓器でのGDH異常による代謝状況を十分に把握するところまで、進捗できていない。
トランスジェニックマウスにおけるアンモニア解毒の全身ネットワークを考えた上で、GDH遺伝子異常のアンモニア産生とメタボローム解析による全代謝を検討する。ホモとヘテロの比較により、重症度の違いによる影響を検討する。肝臓ではN-acetylglutamateの合成低下、カルバミルリン酸合成酵素および尿素サイクル各酵素活性への影響、各代謝バランスを検討する。同時に腎臓、筋肉など他の臓器でのメタボローム解析を行い、アンモニア代謝の役割を明らかにする。トランスジェニックマウスによる長期にわたる高アンモニア血症の発育発達に与える影響を明らかにする。主要症状の一つである低血糖症―高インスリン血症―に対する治療はKATPチャネルへの作用薬であるジアゾキサイドが有効で、良好な血糖コントロールを可能としている。しかしながら、高アンモニア血症に対してはcarbamylglutamate、安息香酸ナトリウムをはじめ有効な薬剤がなく、その治療にはGDH活性そのものを抑制することが必要である。epigallocatechin gallate、aurintricarboxylic acidの高アンモニア血症に対する治療効果を検討する。SIRT4のGDH活性抑制作用と高アンモニア血症との関わりを確認する。
高アンモニア血症の発症と各臓器の相互作用と影響についての検討:アンモニア代謝の生体内の生理的なネットワークシステムを考慮し、GDH遺伝子異常の影響をメタボローム解析、カルニチン解析で検討する。肝臓をはじめとし、腎臓、筋肉などの臓器の役割とその影響を明らかにする。また、ヘテロ、ホモマウスの両者の比較を行うことによって、遺伝的重症度と臨床的重症度の比較を行う。肝臓におけるアンモニア代謝機能を検討する。カルバミルリン酸合成酵素および尿素サイクル各酵素活性の測定とN-acetylglutamateおよびアミノ酸、他の代謝産物の測定、CCAAT/enhancer-binding proteinについて検討する。高アンモニア血症の治療法の開発:モデルマウスへのepigallocatechin gallateとaurintricarboxylic acid経口投与を行い、GDH活性とGTP抑制、ADP促進効果を検討する。血糖、インスリン濃度、アンモニア、アミノ酸を測定する。13C-glutamineの呼気テストを行い、in vivoのglutamineからの酸化能力をマウスの呼気中13CO2で明らかにする。GDH阻害剤としてpyridoxine誘導体のGDH抑制、RNAiを利用した遺伝子治療について検討する。また、SIRT4のアンモニア代謝への影響を検討し、治療への可能性を探る。
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