研究課題/領域番号 |
24591523
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
新宅 治夫 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00206319)
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研究分担者 |
塩見 進 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30170848)
濱崎 考史 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40619798)
藤岡 弘季 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (70382083)
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キーワード | メンケス病 / ATP7A / ジスルフィラム / microPET / 銅 / 発達遅延 / キレート剤 / dペニシラミン |
研究概要 |
メンケス病はは銅の転送酵素(ATP7A)をコードする遺伝子の先天的な異常により、消化管における銅の吸収障害と、吸収された銅の各臓器への移行障害に由来する銅欠乏状態を引き起こす。重篤な銅欠乏により、特徴的な縮れた毛髪、色白で金髪、けいれん、精神運動発達遅滞、脳血管の蛇行などの臨床症状を呈する。治療は銅の補充療法であるが、経口投与では上昇しないのでヒスチジン銅の皮下注射が一般的である。皮下注射では投与後速やかに血中の銅濃度は上昇し血中セルロプラスミン濃度も上昇するため、一定の期間治療を継続すると皮膚や毛髪などで改善が認められるが、中枢神経症状の改善はほとんど認められない。しかし我々はジエチルジチオカルバメイトの2量体であるノックビン(ジスルフィラム)がすでに臨床で嫌酒剤と使用されていることに着目し、銅の皮下注射に加えてこのジスルフィラムの併用療法をメンケス病の新しい治療法として研究を開始した。 平成25年度はヒスチジン銅とジスルフィラムに水溶性キレート剤であるdペニシラミンを併用して腎臓への銅の蓄積を改善する効果について検討した。メンケス病に対するヒスチジン銅とジスルフィラムの併用療法の効果がdペニシラミンを併用することによりどのように影響するか、腎臓だけでなく脳や結合組織についても行った。その結果、ヒスチジン銅とジスルフィラムの併用療法による銅の脳内移行の効果についてはdペニシラミンを併用しても影響を受けず、腎臓からの銅の排泄は著明に改善することが明らかとなった。これにより銅の皮下注射により銅が腎臓に蓄積し腎機能を障害することが指摘されていたが、ジスルフィラムの併用により銅の腎臓への蓄積が若干改善され、さらにdペニシラミンを併用することにより、腎臓の銅の蓄積は著明に改善することができるため、メンケス病に対する銅の長期補充療法の長期予後が著明に改善することが出来ると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コントロールマウスとメンケス病モデルマウスのマクラマウスについて銅の核種である64CuのmicroPETを用いた画像解析を行い、世界で始めて銅の体内動態を明らかにした。さらに銅のキレート剤であるジスルフィラムを投与し、マクラマウスの脳に対する銅の補充療法の効果を明らかにした。その上に水溶性キレート剤のdペニシラミンを併用することによりジスルフィラムによる脳への銅の移行に影響を与えず、腎臓からの排泄が改善することを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は平成24~25年度の基礎的研究の結果を基に臨床応用の効果について、患児のジスルフィラムの治療効果とdペニシラミンの併用療法の効果について検討する。PET装置を用いて64Cuの取り込みを銅代謝の変動を通して経時的に観察し、機能低下と改善をヒトにおいて定量的に証明する。治療効果の観点から、第1に動物実験で得られたmicro PETを用いた治療効果の判定を、ヒトにおいても同一個体で経時的に観察し定量的に証明することで、臨床応用における種々の問題点に対する対策を構築する。第2に銅とジスルフィラム併用療法が脳だけでなく腎臓や結合組織についてもどの程度効果があるかを銅の各臓器組織への取り込みで直接画像解析し、ジスルフィラムの投与量とdペニシラミンの併用療法時の脳と腎および結合組織への至適量について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成26年度は平成24~25年度の基礎的研究の結果を基に臨床応用の効果について、患児のジスルフィラムの治療効果とdペニシラミンの併用療法の効果について検討する. PET装置を用いて64Cuの取り込みを銅代謝の変動を通して経時的に観察し、機能低下と改善をヒトにおいて定量的に証明する。治療効果の観点から、第1に動物実験で得られたmicro PETを用いた治療効果の判定を、ヒトにおいても同一個体で経時的に観察し定量的に証明することで、臨床応用における種々の問題点に対する対策を構築する。第2に銅とジスルフィラム併用療法が脳だけでなく腎臓や結合組織についてもどの程度効果があるかを銅の各臓器組織への取り込みで直接画像解析し、ジスルフィラムの投与量とdペニシラミンの併用療法時の脳と腎および結合組織への至適量について検討する。
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