研究課題/領域番号 |
24591526
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
大橋 十也 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (60160595)
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研究分担者 |
嶋田 洋太 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (20560824)
樋口 孝 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (30595327)
衞藤 義勝 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (50056909)
小林 博司 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (90266619)
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キーワード | ライソゾーム病 / 酵素補充療法 / 免疫寛容 / 抗CD3抗体 / 経口投与 / ポンぺ病 |
研究概要 |
研究内容はライソゾーム病の酵素補充療法において発生する酵素製剤に対する中和抗体に対し、酵素の経口ならびに経鼻投与、そして抗ヒトCD3抗体による免疫寛容導入である。ライソゾーム病の一つであるポンぺ病(α-グルコシダーゼ(GAA)欠損症)のモデルマウスを使用して検討をしている。以下に項目別に本年度の進捗状況を記載する。(1)経口免疫寛容に関しては、昨年度はライソゾーム病の一つであるポンぺ病モデルマウスを用いた実験で、GAA20mgの隔日5回経口投与でGAAに対し免疫寛容を導入が導入出来ることが明らかとなった。本年度は、1mg, 5mg,10mgのGAAを隔日5回経口投与し同様の実験を行ったところ1mg,5mgの経口投与では免疫寛容が導入できなかったが、10mg を経口投与すると免疫寛容が導入出来き、大量のGAAを投与しないと免疫寛容は導入出来ない事が明らかになった。(2)経鼻投与に関しては様々な量のGAAを隔日で5回経鼻投与し、その後GAAを毎週1回計4回経静脈的に投与しGAAに対する抗体価を測定したが免疫寛容は得られなかった。(3)経口免疫寛容導入に於いて、投与するGAAの量を減らせる可能性のあるGAAとCTB(コレラトキシンサブユニットB)の融合蛋白は共同研究先の大阪大学で作成中であるがまだ完成していない。(4)ヒトCD3を発現するマウスに対して抗ヒトCD3抗体を10μg連日5日投与しその後GAAを毎週1回計4回投与しGAAに対する抗体価を測定したが免疫寛容は得られなかった。そこで抗ヒトCD3抗体を50μgに増量し同様の検討をしたが結果は同じであった。ヒトCD3発現マウスはマウスCD3も発現しているため、抗ヒトCD3抗体と抗マウスCD3抗体を混合して投与したところ免疫寛容が導入された。ただこれは1度のみの実験であるので再現性を確かめる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
経口免疫寛容導入に関しては様々な量のGAAを経口投与することによりGAAに対する免疫寛容導入を試みたが、やはり大量のGAAの経口投与を必要とする事が判明した。当初の計画通り経口投与する酵素の量を削減出来る方法の開発が必要である事が強く示唆された。ただより臨床に近い酵素補充療法を行ってもGAAの経口投与で免疫寛容が導入できる事が判明した事は重要な新たな知見である。 経鼻免疫寛容に関しては免疫寛容導入が出来なかった。これも投与するGAAの量的な問題と思われた。経口免疫寛容導入に関して、経口投与する酵素を減少する事が期待されるGAA とCTBとの融合蛋白作成が開始された。しかしながらまだ完成にはいたっていない。共同研究先での融合蛋白作成が遅れている事がその理由である。 ヒトCD3発現マウスを用いた抗ヒトCD3抗体を用いた免疫寛容導入の実験は予定より早く、開始することが出来た。しかしながらポンぺ病モデルマウスで抗マウスCD3抗体を用いて免疫寛容が導入出来た投与プロトコールと同じプロトコールで実験を行ったところ、抗ヒトCD3抗体単独では免疫寛容導入が出来なかった。理由としてはヒトCD3発現マウスではマウスCD3も発現しているため、もしくは抗マウスCD3抗体と抗ヒトCD3抗体の薬物動態が異なる事がその理由としてあげられる。
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今後の研究の推進方策 |
申請段階での目的の一つであるライソゾーム病酵素補充療法で発生する酵素製剤に対する抗体の特徴付けは、本来の目的を達成し研究を終了した。現在論文にすべく準備をしている。 酵素補充療法における免疫寛容導入に関しては、GAAを経鼻投与して免疫寛容を導入する事は当該モデルでは困難が予測されるので、一時研究を停止する。GAAとCTBの融合蛋白を作成し、それを用いて経口免疫寛容を導入する研究は、共同研究先の大阪大学で融合蛋白を植物細胞による発現系を用いて作成中である。作成後はポンぺ病モデルマウスに経口投与しGAAに対する免疫寛容導入をめざす。GAAの経口投与の回数、量などは現在検討中である。その後、GAAを20mg/kg、2週間に1回、合計10回計静脈内に投与し、GAAに対する抗体価の推移を検討する予定である。先方での人手不足も一つの原因であり、当方より人材を派遣することも考慮している。 既に米国などで承認されている抗ヒトCD3抗体による免疫寛容導入は前臨床試験の位置づけでヒトCD3発現マウスを用いて研究を進めている。すなわちヒトCD3発現マウスに抗ヒトCD3抗体をポンぺ病モデルマウスに投与した後にGAAを経静脈的に投与し抗体発生の推移を検討するものであるが、抗ヒトCD3抗体をGAA投与前に5回投与するだけでは免疫寛容が導入できなかった。今後は抗マウスCD3抗体の併用を行う予定である。それと伴に、抗ヒトCD3抗体の体内薬物動態の検討を行いGAAに対する免疫寛容を導入するための抗ヒトCD3抗体の適切な投与プロトコールを検討する。もしくはマウスCD3をノックアウトすることも必要かもしれない。
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次年度の研究費の使用計画 |
現時点で予定していた研究に若干の遅れが生じている。特にCTBと酵素製剤の融合タンパクは作成が遅れている。これに関しては平成26年度に勧める予定であり、このための研究資金を平成26年度に使用するため次年度使用額が生じた。また抗ヒトCD3抗体を用いて免疫寛容を導入する研究では研究の進捗があったため、ヒトCD3発現ポンぺ病モデルマウスを作製するところまで進展する可能性があり、その作成のための資金を平成26年度に使用する可能性があるため次年度使用額が生じた。 CTBと酵素製剤の融合タンパク質作成のための費用、ならびにそれを用いた動物実験のための費用に使用する。 また未定ではあるが、ヒトCD3発現マウスを作製する費用に使用する。
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