研究課題/領域番号 |
24591531
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
松石 豊次郎 久留米大学, 医学部, 教授 (60157237)
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研究分担者 |
山下 裕史朗 久留米大学, 医学部, 准教授 (90211630)
高橋 知之 久留米大学, 医学部, 准教授 (20332687)
西 芳寛 久留米大学, 医学部, 講師 (20352122)
御船 弘治 久留米大学, 医学部, 准教授 (70174117)
松本 直通 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80325638)
江良 択実 熊本大学, 学内共同利用施設等, 教授 (00273706)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | レット症候群 / グレリン / 成長 / レット症候群モデル動物 / 骨髄移植 / ES細胞 / iPS細胞 / 初代培養細胞 |
研究概要 |
1.グレリンの研究:①.Rett症候群(RTT)における生物マーカーとしてのグレリン(GRL)を年齢・性別等を一致させた疾患コントロール(てんかん/精神発育遅滞症例(EP/MR症例))の空腹時GRL、GH、IGF-1の血中濃度と比較し、身体パラメーター(身長、体重、頭周囲長、BMI)との相関について比較検討した。RTT症例の体重と血中GRL濃度で負の相関が認められたが、身長、BMIとGRL濃度の間には有意な相関は認められなかった。RTT、EP/MR症例ともに、その頭周囲径はGRL濃度と正相関を、血中IGF-1濃度とは負相関を示した。前思春期では、RTT症例の活性型GRLの比率がEP/MR症例の比率より高く(p<0.05)、活性型GRL比が身体発育(低身長・小頭症)の生物マーカーとなる可能性が示唆された。②.RTTへの新規治療法の確立を目指して、RTTモデルマウスへのグレリン投与による治療効果、及び、モデルマウスへの骨髄移植(骨髄キメラマウス作成)に向けた基礎検討を施行し、グレリン投与により、発症早期のRTTマウスの死亡率が低下する可能性が示唆された。 2.ES細胞、iPS細胞を用いた研究:本年度は、RTTモデルマウス脳由来のグリア細胞の分子生物学、生理学的な解析を行った。対照コントロールの正常マウス由来グリア細胞と比較して、MeCP2を欠損したグリア細胞では、細胞増殖や細胞障害、細胞毒に対する細胞生存率の有意な差が認められないものの、アストロサイト特有の遺伝子発現やグルタミン代謝の亢進が認められることが明らかとなった。現在、脳以外の発生分化の研究も遂行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
グレリンの研究では、九州のRTT患者の親の会(さくらんぼ会)の全面的な協力が得られ、生物マーカーとしてのGRLの頭囲を含む成長発達との関係が証明されつつある。また、当施設は多くの神経発達障害の患者さんの治療、教育を行っていた実績が豊富であり、疾患コントロール(てんかん/精神発育遅滞症例(EP/MR症例))の症例も早く集める事ができた。RTTモデルマウスへのGRL投与研究も、モデル動物、コントロール動物を7年前から飼育し研究に用いてきた実績があり、予定通り研究が進んでいる。また、早くからES細胞、iPS細胞、初代培養細胞を用いる実験系を確立し、基礎の神経生理学教室とも共同研究を行ってきたため、RTTモデルマウス脳由来のグリア細胞の分子生物学、生理学的な解析をスムースに行う事ができた。脳以外の組織、細胞分化、機能解析に関する研究も進めており興味ある結果が得られつつある。
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今後の研究の推進方策 |
臨床―基礎研究を今まで通り行い、更に発展させる予定である。レット症候群患者でのGRLの臨床効果を見るため、プロトコールを作成し倫理委員会に諮り、将来のトランスレーショナルリサーチへの発展を目指す。基礎研究としては、まずワイルドのC57BL/6マウスで生後発達に伴う脳内総GRL含量、アシルGRLの含有量の変動、GRLのmRNA、GRLのアシル化に関連する酵素ghrelin O-acyltransferase (GOAT)、および脱アシル化に関するAcyl-protein thioesterase 1(APT1)のmRNAを調べる。 次に、モデルマウスでの発達における脳内総グレリン、オクタン酸およびデカン酸グレリンの変化を検討し、上記の同様のチェックを行う。モデル動物へのグレリン投与研究、グレリン投与と骨髄移植の効果を数を増やして検証する。ES細胞、iPS細胞を用いた研究では脳以外の細胞、組織への分化および生理機能解析を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
ヒトのレット症候群(RTT)、モデル動物の両面からRTTの病態生理の解明を目指し、治療法のない難治疾患への将来の新規治療への基盤を形成する。RTT患者の発育で血中グレリン、IGF1を測定し、成長ホルモン(GH)を中心とした臨床症状との関連を明らかにするため費用が発生する。 また、ヒトRTTの睡眠、自律神経機能を解析する為、唾液を用いたメラトニン測定、コーチゾール測定のELIZAキット等の消耗品も必要となる。モデル動物を用いてWildのマウスの骨髄移植とグレリンの腹腔内持続投与を確立、グレリンの治療効果、病態解明のための基礎実験をおこなう。 RTTマウスの生命予後は短いこと、モデルマウスの総グレリン値、活性型グレリン値は野生のマウスに比べて明らかに低い事を既にPreliminary dataで確認している。今後、症例数を増やして更に検討を行い、グレリンの腹腔内持続投与システム(浸透圧ポンプ)を用いた実験系を確立し、グレリンの治療効果、および病態解明のための基礎実験をおこなう。更に治療後のマウスの血中、胃内、脳内のグレリン測定をおこない、生存曲線の改善、成長、食行動の改善がないかも検討する。研究費は、モデル動物の飼育、メインテナンス、モデル動物への骨髄移植、グレリン投与実験などの消耗品、およびES細胞、iPS細胞樹立、それらを用いた病態生理解明の実験費用に充てる。情報収集の為に学会に参加し、更に共同研究者との情報交換の為に旅費が必要である。
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