研究課題/領域番号 |
24591534
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 公益財団法人冲中記念成人病研究所 |
研究代表者 |
大久保 実 公益財団法人冲中記念成人病研究所, その他部局等, 研究員 (60241238)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | グリコーゲン |
研究概要 |
糖原病III型(glycogen storage disease type III: GSDIII)の発症機構を明らかにするために、グリコーゲン脱分枝酵素(glycogen debranching enzyme: GDE)活性が欠損するメカニズムを検討している。GDEをコードする遺伝子がAGLである。 平成24年度に得られた結果は以下の通りである。 1. 従来の遺伝子解析方法ではAGL遺伝子に異常が検出できなかったGSDIII患者4例(明らかな血族関係はなし)で末梢白血球を用いてAGL酵素活性を再検査し、欠損していることが確認できた。このうち2例を用いて、ゲノムワイドな網羅的遺伝子変異検索を行った(カナダのマックギル大学との共同研究による)。その結果、AGL遺伝子に一塩基欠失があることが判明した。従来の方法で検出できなかったAGL遺伝子の異常によって、GDE活性が欠損していると考えられ、現在さらに検討中である。 2. 従来の遺伝子解析方法で変異が検出できなかったGSDIII患者を対象に、大きな遺伝子欠失の有無を調べるために、real-time PCRを用いてAGLの全exon(32個)のcopy number assayを行った。その結果、複数のエクソンにまたがる大きな遺伝子欠失を持つ患者が発見できた。このメカニズムについてさらに検討中である。 3. 新たなGSDIII患者の解析で、AGL遺伝子に新規な4塩基欠失と既報の1塩基重複を見いだした。この患者は2つの異なる変異の複合ヘテロ接合体であった。この結果をまとめた論文は英文雑誌に受理され、現在印刷中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. ゲノムワイドな網羅的遺伝子変異検索の有効性を確認できた。 2. AGLについてのExon copy number assayを確立できた。 3. AGL遺伝子の新規な変異を見いだした。
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今後の研究の推進方策 |
GSDIII型には当初AGL遺伝子に変異がない患者が約10%存在すると考えられたが、従来の遺伝子解析法を補完する方法を用いて詳細に検討すると、そのなかにAGLに関わる異常があった。 従って、グリコーゲン分解系異常を惹起してGSDIIIを発症するメカニズムの解明には、AGLのre-sequencing、exon copy number assay、そしてゲノムワイドな網羅的遺伝子変異検索が有効であると考えられ、今後 検討を続けていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度にこれまでの実験方法を改良して、従来の約1/3の消耗品(とくにシーケンス試薬) によってシーケンスすることが可能になった。このため、消耗品の使用額を圧縮することができ、次年度使用額が生じました。 グリコーゲン分解系異常を惹起してGSDIIIを発症するメカニズムの解明には、AGLのre-sequencing、exon copy number assay、そしてゲノムワイドな網羅的遺伝子変異検索が有効であると考えられ、同じ領域を繰り返してシーケンスして読み間違いを減らすために 遺伝子関係の消耗品がこれまでの数倍必要になると想定しています。これに次年度使用額を用いて対応します。
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