研究課題/領域番号 |
24591536
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐藤 直子 東京大学, 医学部附属病院, 登録研究医 (10383069)
|
研究分担者 |
瀬尾 美鈴 京都産業大学, 公私立大学の部局等, 教授 (60211223)
田中 敏章 独立行政法人国立成育医療研究センター, その他部局等, その他 (90142067) [辞退]
北中 幸子 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (30431638)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 妊孕性獲得 / 遺伝子解析 / ゴナドトロピン療法 / 男性性腺機能低下症 |
研究実績の概要 |
先天性男性中枢性性腺機能低下症(CMHH)は不妊の原因疾患であり、ゴナドトロピン療法(GT)による原因療法が可能であるが、小児期の思春期導入法と成人期の妊孕性獲得療法は確立されていない。また、遺伝的異質性が高く、約7割の原因は不明である。本研究の目的はCMHHにおいて、①迅速かつ効率的な分子遺伝学的診断法を開発すること②患者の長期治療経過を集積し、小児期~成人期の適切な治療法を確立すること③遺伝子異常が治療効果に与える影響を明確にし、CMHHの治療指針作成を目指すことである。 平成26年度では、新たに得られた検体の次世代遺伝子シーケンス解析と前年度から行っている変異機能解析、変異陽性・陰性例の臨床解析を引き続き行った。 当疾患の既知遺伝子変異の約30%を占めるFGF-FGFRネットワーク関連遺伝子群であるKAL1、FGFR1、FGF8、HS6ST1等をA群と分類した。現在、A群の遺伝子変異機能解析では、変異が神経機能に与える影響を検討し、結果を取りまとめている。臨床解析では、A群変異陽性CMHHにおいて、通常のGTを行う群とGTとrFSH先行療法を併用する群の身長、性成熟・骨年齢の成熟度、妊孕性獲得等の治療経過を収集している。 平成25年度には、われわれは、大半の蛋白機能が喪失するA群の変異陽性例では、通常のGTへの反応性が不良であり、遺伝子異常が妊孕性獲得に影響する可能性を示した。現在、途中経過であるが、大半の蛋白機能が喪失するA群の変異陽性例において、rFSH先行療法併用後に数年で精子形成が認められることをみいだした。この結果は、通常のGTへの反応性が低いと予測される変異を有する症例においても、rFSH先行療法の併用が妊孕性獲得に有効である可能性を示すものである。この結果を踏まえ、われわれは、将来の妊孕性と生理的な性成熟の発達を考慮した、小児期・成人期におけるCMHHの治療の新しい治療指針案を論文投稿し、採択されている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度に新たに研究参加した症例において、次世代遺伝子解析シーケンス法による遺伝子解析を行い、解析結果の取りまとめと論文投稿を予定していたが、研究代表者の研究機関移行により、一時的に遺伝子解析の研究遂行が中断されたためである。しかしながら、次世代シーケンサーを用いた当疾患の責任遺伝子群における変異解析は再開され、現在進行している。変異機能解析も進み、一部結果の取りまとめも行われている。また、臨床解析においても、臨床医からの臨床情報の収集が順調に進み、将来の妊孕性を考慮したrFSH先行療法やホルモン少量療法を用いた症例の治療経過のデータも得られ、集計している。さらに、rFSH先行療法による妊孕性獲得への効果を見いだし、CMHH患者における小児期の治療プロトコールの案を報告するに至っている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策として、1) 新たに研究参加した症例における次世代シーケンス法による遺伝子解析の結果を加え、解析結果の取りまとめを目指す。2) 同定された変異の機能解析結果をとりまとめ、CMHHの疾患成立機序を明らかにする。3) 変異および臨床解析:結果をデーターベース化し、臨床に直結するデータを患者へ還元する。4) 治療経過の集計を行う。既にGTを開始し、遺伝子検査の結果が出ている症例では、遺伝子変異の機能解析結果と臨床経過を照らし合わせ、治療効果と遺伝子変異の相関性を検討する。さらにrFSH先行療法とGTを併用した治療群と通常のGT治療群間での治療効果を比較する。得られた治療効果により、既に報告している治療指針案を改良する。 以上に4点について研究を遂行し、最終年度として結果を集計していく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に、新たに研究参加した症例において、次世代シーケンス法による変異解析・機能解析・臨床解析を行い、解析結果の取りまとめと論文投稿を予定していたが、研究代表者の研究機関移行により、一時的に研究遂行が中断され、再始動に時間を要したため、次年度使用額が発生した。
|
次年度使用額の使用計画 |
このため、次年度に変異解析・機能解析・臨床解析と研究成果の取りまとめを行い、学会発表・論文投稿をすることとし、未使用額をその経費に充てることとしたい。
|