研究課題/領域番号 |
24591541
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
長澤 正之 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (90262196)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 造血幹細胞移植 / 酸化ストレス / 血栓凝固 / 慢性炎症 / GVHD |
研究概要 |
慢性GVHDマウスモデル[Donor : B10.D2 (H-2d), Host : Balb/c (H-2d)へのマイナーミスマッチの系]を用いてヒトリコンビナント・トロンボモジュリンの影響を解析するための実験系確立の検討を行った。ヒトリコンビナント・トロンボモジュリンの投与量を決定するために、マウス血液を用いてin vitro, in vivoで抗凝固活性、出血症状の出現の程度について検討を加えた。0.3、1、3mg/kg、週2回投与での検討を行い、3mg/kgでは出血症状・凝固異常が強く出すぎることが判明したため、0.3mg/kg、1mg/kg投与で解析を行うこととした。さらに投与方法について検討した。移植直後より投与開始する場合と移植後3週より投与開始する場合で検討したところ、移植後直後より投与した場合は消化管出血症状が強く出ることが判明し、投与時期によって効果・影響に差がある可能性が示唆された。3週以降に投与した群では生存率の点で対照群に比し改善傾向がみられた。 in vitro 誘電凝固測定系に関する条件検討を行い、安定したデータを得る条件を確立することができ、実応用へつながる可能性が見えてきた。その系を用いてヒト全血をもちいて、トロンボモジュリン、ヘパリン、ヘパリン+トロンボモジュリンの影響を検討したところトロンボモジュリン<5μg/mLでは凝固延長作用は見られず、また凝固延長を示すヘパリン0.2U/mLと共存下でも凝固延長相乗効果は見られなかった。以上より、トロンボモジュリンは臨床使用範囲では(<1μg/mL)出血症状のリスクは少ないと判断された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
誘電凝固測定系については安定した測定が可能になり、臨床検体の解析が十分できるようになった。また、血栓傾向をとらえるに適した刺激系、出血傾向をとらえるのに適した刺激系と分けて測定することの有用性が新たに示唆され、臨床応用がより広がる可能性がみえてきた。 GVHDマウスモデルでは、実験系が確定できたこと、またトロンボモジュリン投与がGVHD症状に影響を及ぼす可能性が示されたこと、また投与方法により効果の出現に差があることなどが示され、今後の研究継続に意義があることが確認された。 急性GVHDにおける赤血球PRDX2の断片化については、その機序あるいはプロテアーゼの同定に関する進捗は得られなかった。
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今後の研究の推進方策 |
トロンボモジュリンのマウス慢性GVHD移植モデルへの影響を検討する実験系が確立したこと、また移植3週後からの投与群で生存率の改善がみられたことより、今後はその作用機序について病理学的検討や免疫学的検討を加えてトロンボモジュリンの新たな作用機序・有用性について解析をしてゆく予定である。 測定条件が確立した誘電凝固測定系を利用して、臨床検体を測定してその安定性の検討を行うとともに、患者の臨床データとの検討を行い、誘電凝固測定の実臨床に関する有用性を検証してゆく。 また、酸化ストレスの影響下で誘電凝固がどのような影響を受けるかどうかについて、in vitro, in vivoの両面で検討を加えてゆく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の直接経費の予定額は120万円であったが、平成24年度の繰越金が45万程あるため、直接経費予算を165万として計画する。 消耗品として、110万円を予定する。その内訳は、マウス飼育関連費として60万円、細胞培養液・器具関連費として30万円、抗体試薬費として20万円を計上する。また研究会・学会出席のための費用として30万円(国内学会・研究会計5回予定)、またその他雑費(印刷関連・通信関連・PC消耗品)として25万円を計上する。
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