研究課題
基盤研究(C)
本年度は、Epstein-Barrウイルス(EBV)関連血球貪食性リンパ組織球症(EBV-HLH)のサイトカインプロファイルの特徴を明らかにした (Wada et al. Pediatr Blood Cancer, in press)。EBV-HLH患児11名と、コントロールとしてEBVによる伝染性単核症(IM)11名およびパーフォリン欠損による家族性血球貪食性リンパ組織球症(FHL2)4名から採取した急性期の血清もしくは血漿を用いて、炎症性ならびに抑制性サイトカイン計10種をELISAを用いて解析した。EBV-HLHではIMに比べ、IFN-γ、IL-6、IL-10、IL-18、ヘムオキシナーゼ-1が有意に高値を示した。しかし、これらはFHL2患児とほぼ同じプロファイルであった。したがって、EBV-HLHで認められたサイトカインプロファイルは、HLHという病態を反映しているものであり、CD8陽性T細胞に対するEBVの異所性感染に起因しているのではないことが示唆された。一方TNF-αは、EBV-HLH、IMともに上昇していた。またEBV感染細胞からviral IL-10が産生される可能性があるが、EBV-HLHにおけるIL-10高値については、FHL2と同程度であったことからviral IL-10の関与は高くないことが示唆された。これらサイトカインプロファイル解析と、フローサイトメトリーによる解析、すなわちCD8陽性T細胞におけるクローン性増殖とCD5発現低下の解析を組み合わせることは、EBV-HLHの診断、病態把握に非常に有用であることが示された。
2: おおむね順調に進展している
本研究は、EBV-HLHの臨床的検討、患児由来の細胞や血清を用いた細胞分子生物学的解析から、EBV-HLHの病態を解明し、臨床に役立てることを目的としている。これまでに細胞解析とサイトカイン解析の組み合わせが、EBV-HLH診療の極めて良い指標となることを明らかにしてきており、おおむね順調に進展していると考えている。
今後もEBV-HLH症例の解析を続ける一方、多様なHLHを解析することによりEBV-HLHの病態を解明していく。特に、EBV感染CD8陽性T細胞におけるCD5発現低下の意義を解明したいと考えている。興味深いことに、パーフォリン欠損によるFHL2の5例全例で、EBV-HLHと異なりクローン性増殖は伴わないものの、急性期にCD5発現が低下した活性化CD8陽性T細胞が検出されている(論文準備中)。このことは、CD8陽性T細胞においてHLHに共通した、CD5低下をはじめとした異常免疫応答が存在する可能性を示している。またEBV-HLHに特有の細胞マーカーや血清マーカーを見出すべく、実際の臨床の材料を用いて検討中である。
フローサイトメトリーによる細胞の表面抗原解析に必要な単クローン抗体、細胞分離や細胞培養に必要な試薬、サイトカイン測定に必要なELISAキットなど、消耗品の購入にもっとも研究費を使用する予定である。また、成果を社会に還元するため、国内外での学会発表や国際誌への論文執筆は必須と考えており、これらに対する経費も必要である。なお、平成24年度に若干の未使用額(\6,561)が生じているが、効率的な予算執行により端数が生じたためである。
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