研究課題
EBV関連血球貪食性リンパ組織球症(EBV-HLH)におけるEBV感染T細胞は、クローン性に増殖しCD5発現の低下した活性化CD8陽性T細胞としてフローサイトメトリーにより検出可能であることを報告してきた。しかし、CD5発現低下を伴うCD8陽性T細胞の出現自体は、EBV-HLHに特異的ではない。実際、パーフォリン欠損による家族性HLH(FHL2型)では、高サイトカイン血症が存在する急性期に、CD5発現が低下した異常な活性化CD8陽性 T 細胞が出現することを既に報告した。本年度は、このような表面マーカーの特徴を示すCD8陽性T細胞が、Munc13-4欠損による家族性HLH(FHL3型)でも認められることを報告した(Pediatr Int 2014)。細胞傷害性顆粒やその放出に関連した異常によって引き起こされるFHLでは、細胞傷害活性の低下によりウイルス感染細胞等の除去が制限され、リンパ球やマクロファージの異常活性化と高サイトカインが生じる結果、HLHが引き起こされる。一方、EBV-HLHでは、EBVがCD8陽性T細胞に異所性に感染し、クローン性に異常増殖することでHLHが引き起こされる。これら発症病態の異なるFHLとEBV-HLHにおいて、表面マーカーの同様の特徴を示すCD8陽性T細胞が出現することは興味深い。血清のサイトカイン解析でもFHLとEBV-HLHは同様のプロファイルを示すことが判明しており、両者には共通する異常免疫応答が存在する可能性がある。しかし、EBV-HLHではEBV感染CD8陽性T細胞がクローン性に増殖することを反映し、特定のT細胞レセプターVβを有したCD8陽性T細胞のみにCD5発現低下と異常活性化がみられる点がFHLと異なる。したがって、EBV-HLHが疑われる際には、T細胞レセプターVβレパトア解析を併用した総合的な解析が必要であることが示された。
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