研究課題/領域番号 |
24591543
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
西村 良成 金沢大学, 大学病院, 講師 (50324116)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | GVHD / 肥満細胞 / 造血幹細胞移植 |
研究概要 |
我々は造血幹細胞移植の抗腫瘍効果(GVT)を増強する方法としてCytokine-induced killer (CIK) 細胞の臨床応用を目指しているが、動物実験では軽度の慢性移植片対宿主病(GVHD)が出現してしまう。慢性GVHDとIL-17との関連を示してきたが、この研究の過程でGVHD病変には、肥満細胞が増多しており病態との関連が疑わしい事実に気付いた。従来からの認識では肥満細胞は、アレルギーに関与する細胞との認識であったが、最近の研究から様々な作用を有する免疫担当細胞であるという認識のもと、造血幹細胞移植領域での肥満細胞の役割解析を本研究の一つの柱とした。H24年度は、肥満細胞を骨髄細胞からIL-3などを添加し大量培養系を確立した。この細胞をB6マウス骨髄由来の樹状細胞をstimulator、 Balb/cの脾細胞をeffectorとしてリンパ球混合培養(MLR)を行った。肥満細胞をこの系に添加するとMLRが優位に減弱し、肥満細胞が免疫抑制効果を示す細胞群であることが判明した。肥満細胞内にある各種メディエーターを介した反応ではなく、細胞間接触を介しての抑制効果であることを確認した。またGFPを発現するB6マウス骨髄から、肥満細胞を増幅できることも確認した。この細胞を使って同系移植を行い、この細胞が生体内でも長期に生存していることをGFPを利用して証明した。今後、同種移植でのcell traffikingへ応用していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、肥満細胞が大量に培養できるかどうかが問題点であった。指摘培養の条件設定に時間を要したが、再現性も認め安定した肥満細胞の供給が可能となった。その後の研究過程は順調であり上記の結果を得ることができた。以上から概ね順調と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
肥満細胞は、in vitroではリンパ球混合試験(MLR)を抑制することから免疫抑制作用を有すると推定できる。今後は、まず急性GVHDの同種移植モデルマウスを利用して生体内での肥満細胞の役割を確定する。GFP+肥満細胞も利用することにより、生体内でも肥満細胞の動態を合わせて解析する。また慢性GVHDに関しては、急性GVHDの病態とは異なり、より複雑な細胞群の連携により発症すると考えられる。肥満細胞欠損マウスを下記に示すような組み合わせで移植を行う。1)肥満細胞KOマウスを移植ドナーとして用いた群、2)肥満細胞KOマウスをホストとして用いた群、3)ホスト、ドナー共に肥満細胞KOマウスを用いた群を比較検討する。肥満細胞に加えて、マクロファージ系の解析を追加して、慢性GVHDの複雑な病態解析に挑戦したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
肥満細胞の培養条件の設定に時間を要したため、予算がより必要とされるin vivo実験が持ち越しとなった。その実験費となるマウス購入費、飼育費ならびにその解析用のモノクローナル抗体の購入費に当てる。
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