研究課題/領域番号 |
24591546
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
岩本 彰太郎 三重大学, 医学部附属病院, 助教 (20456734)
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研究分担者 |
平山 雅浩 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90293795)
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キーワード | N-cadherine / BM niche / CNS niche / Leukemia |
研究概要 |
小児白血病治療成績の更なる向上をめざし、骨髄ストローマ細胞及び脳組織に高発現する接着分子(N-カドヘリン)を標的分子とし、白血病における同分子の臨床的意義を検討する。 1) 急性白血病細胞(ALL)株及びヒト骨髄由来ストローマ細胞(BMSC)株におけるN-カドヘリン発現:N-カドヘリン分子発現を認めたALL株及びBMSC株の継体培養において、同分子が恒常的に発現していることを確認した。 2)遺伝子改変細胞株の機能解析と細胞形態検討:N-カドヘリンを高発現するBMSC株及びALL株を用い、レトロウイルス遺伝子改変術で同分子の恒常的抑制細胞株を樹立。しかし、改変ALL株で同分子の発現抑制は認めるも、その効果にばらつきがあり、段階希釈法にて細胞選択を試みるも、うまく行かなかった。そこで、昨年度樹立した遺伝子改変細胞株をバルク細胞株として用いることとした。同ALL株のcell growthは、改変前では細胞接着傾向が強く、aggregateして増殖していたが、改変後では、細胞接着が抑制された状況で増殖した。また、同細胞株に特徴的な抗原や細胞生存率には差は認めなかった。改変BMSC株に関しては、恒常的に同分子の発現抑制効果を認め、継体培養においても細胞形態及びcell growthに変化なく、ALL株の細胞支持能にも影響を認めなかった。 3)急性骨髄性白血病(AML)初診時検体でのN-カドヘリン発現分画の検討:N-カドヘリン抗原を発現したAML株を見いだせなかったため、初発時AML検体での同抗原発現検索を開始したが、その発現は限局的であり、他の抗原マーカーとの組み合わせ、真の芽球細胞に同分子が発現しているかを検討している。 4)Cytotoxicity assayの検討:2)で樹立した改変BMSC株とALL株との混合培養系において、抗がん剤によるcytotoxicity assayを開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究成果概要にも記したが、N-カドヘリンを抑制する遺伝子改変RNAi細胞株において、特に急性リンパ性白血病株では、同分子の発現抑制効果にばらつきがあり、より正確な実験を開始するにあたり、細胞選択を試みたが上手くいかなかった。どの白血病細胞もGFP陽性を示し、目的ベクターが組込まれていることを確認できているが、同分子の抑制効果にばらつきがあることはよくある。しかし、本細胞株はsingle cellでの細胞培養が困難なため、そのセレクションができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、樹立した遺伝子改変細胞株をバルク細胞株として利用し、実験を進めていく。 現在、白血病骨髄微小環境を想定したin vitro assay系として、ヒト不死化骨髄由来ストローマ細胞株と急性リンパ性白血病株との混合培養実験をベースに、薬剤感受性試験を開始している。今後は、migration assayについても検討する予定である。 また、現在実施している8カラーフローサイトメトリー法を用いた急性骨髄性白血病初診時検体でのN-カドヘリン発現細胞の検討についても、継続して研究を行っていく。このことで、従来指摘されている急性骨髄性白血病のい幹細胞分画への同分子の発現を有無の検討は非常に興味深いものになると確信している。 最後に、本研究目的の一つである白血病細胞の中枢神経浸潤の検討を行うために、ヒト脳由来微小血管内皮細胞(HBMEC)を用いた研究を行う。まずは、同細胞におけるN-カドヘリン発現及び白血病細胞株の支持能力を検討し、同分子の役割を解明することを予定している。
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