研究課題
3年間を通して、小児白血病治療成績の更なる向上をめざし、骨髄ストローマ細胞に高発現する接着分子(N-カドヘリン)を標的分子とし、白血病における同分子の臨床的意義を検討した。前半2年間では、ヒト不死化骨髄ストローマ細胞株(hTERT-BMSC)、白血病細胞株及び小児T 細胞性白血病初発時検体におけるN-カドヘリンの発現をPCR 及びWestern blot 法で確認した。B-pre ALL 細胞株では697 にのみ、T-ALL 細胞株ではCEM>Molt4、AML 細胞株ではKG1、KG1a において、その発現を認めたが、蛋白レベルではAML 細胞細胞株での検出は困難であった。一方、BMSC では、primaryでもhTERT-BMSC においても、N-カドヘリンは高発現しており、レトロウイルスベクターを用いたいRNAi では、ほぼ完全に同分子の発現を抑制した細胞株を樹立できた。ALL 細胞株で高発現していた697 においても、同様に同分子の発現抑制細胞株を樹立した。697 細胞は、細胞培養時、細胞塊(aggregate)を形成し増殖していくが、同分子抑制細胞では、細胞塊を形成せず、細胞塊形成にはN-カドヘリンが関与していることが分かった。本年度(最終年度)では、697 細胞の薬剤感受性において、N-カドヘリンの影響を検討するためにN-カドヘリン中和抗体(GC-4)を用いた感受性試験を実施したとこと、dexamethasone、L-asparaginase、vincristine等の白血病主要薬剤で殺細胞効果が増強する傾向を認めた。また、急性骨髄性白血病検体におけるN-カドヘリン抗原発現を多次元フローサイトメトリーにて初診時から治療後まで追跡したが、初診時から発現している検体がなく、今後の課題(抗体の種類や検体数を増やす)として取組む必要がある。これらのことから、N-カドヘリンは、白血病細胞の薬剤耐性機序にある一定の役割を担うことが予想され、N―カドヘリンを高発現するBMSC との白血病骨髄微小環境での同分子発現抑制剤は、臨床的意義を見出すものと期待される。
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Pediatr Blood Cancer
巻: 61 ページ: 1160-1161
10.1002/pbc.24965